これは、宮崎駿ネットワーカーFCのWindsTalkメーリングリストに書いた内容の再編集版です。
カンブリア爆発 §
フジモトが言っている「カンブリア爆発」というのは、大ざっぱかついい加減に言えば、カンブリア紀に生物種が爆発的に増えたことを示す言葉です。当然、恐竜の時代よりも遙かに昔です。今の生物種とは直接つながらない特異な形状の生き物が多く含まれるとされます。
カンブリア爆発
特に有名なのは、バージェス・モンスターとも呼ばれるバージェス動物群です。
バージェス動物群
これには、あの有名な「アノマロカリス」なども含まれます。
宮崎さんもどこかで映像化したいと言ったことがあるような記憶があります。
ケロロ軍曹でナウシカネタをやったときに、王蟲の代わりに来たのがアノマロカリスです。
もっとシリアスな作品だとジーン・ダイバーにも出てきますね。人類の遠い祖先と言われるピカイアも出てきます。
他にも探せば事例はあると思います。
そういう意味で、古代生物の世界に「一歩踏み込みすぎた癈人達」に、カンブリア紀の生き物は大人気だと思います。
やはり、「あり得たかも知れない別の生命の形」が、具体的な形を持った化石として出てくることは、エキサイティングだと思います。単なる夢想、ファンタジーの怪物とは違うわけです。
ちなみに、私もこのあたりの生き物が大好きです。恐竜は全く興味を持てませんが、このあたりの生き物は大好き。何かこう、心の奥底の原始的な部分が刺激されるというか、イメージが広がりますよね。
※ が、宮崎さんは「その筋の癈人」ならみんな良く知っているカンブリア紀の怪物達ではなく、デボン紀の魚を描いたのであった。
少女革命ウテナとデボン紀 §
地質時代はカンブリア紀、オルドビス紀、シルル紀、デボン紀と続きます。
フジモトがぶつぶつ言ったのがカンブリア紀で、宗介とポニョが見た魚はデボン紀。
では中間のオルドビス紀、シルル紀までなぜ名前がすらすら出てくるのでしょう?
いや私だけではないはず。少女革命ウテナの熱心なファンなら必ずすらすら言えるはずです。
ここでシンキングタイム!
正解を書く前に改行をたくさん入れておきます。
答はJ.A.シーザーの「肉体の中の古生代」の台詞。
歌詞はここに。
肉体の中の古生代
実は耳で聞いていると歌詞はさっぱり意味不明で、上の歌詞を見て初めて意味を知った箇所も多数。
ただ、"カンブリア オルドビス シルル デボン"の箇所に限っては聞き取りやすいのでほとんど正確に記憶にすり込まれていました。他にもそういう人はいるはず。
とはいえ、デボンの後は
「ストロス トライト バクテリア コレニア 三畳 ジュラ紀 白亜紀」
と続いて、必ずしも忠実に時代区分を追っていないのですよね。
ちなみに、ウテナの最初のオリジナルサウンドトラックの27曲目です。
余談・圏外の女 §
話は飛びますが。
押井守監督のケータイ捜査官7「圏外の女」。日経夕刊を何気なく読んでいたら、ここに出てくるいろいろな意味不明の言葉は寺山修司の詩歌からの引用なのだそうな。
で、実はここで上の文章の以下の部分に話がつながります。
答はJ.A.シーザーの「肉体の中の古生代」の台詞。
寺山修司が主催した劇団「天井桟敷」に音楽を提供したのがJ・A・シーザー。少女革命ウテナの歌は、もともと「天井桟敷」のために書かれたもの(だと思うが詳細未確認)です。
つまり、話が遠くに飛び出したと思ったら、一回りして元に戻ってきたような感じですね。(自分としても、けっこう意外で面白いよ!)
ポニョと山田ミネコとイクチオステガ §
実は間抜けなことに気付かなかったことが一点。
ポニョを最初に見た後、軽くデボン紀を調べたのですが。
デボン紀より
デボン紀は、魚類の種類や進化の豊かさ、さらに出現する化石の量の多さから、「魚の時代」とも呼ばれている。
このようなタイプの説明から「魚の時代」と理解してしまい、その後、それ以上突っ込む機会を失っていました。
しかし、それによって重大な見落としが発生していました。
元山田ミネコファンとしては、あってはならない見落としです。
それは、デボン紀を代表する生物(両生類)の1つであるイクチオステガという存在を見落としてしまったことです。両生類もデボン紀に生まれているわけです。
イクチオステガ
イクチオステガといえば、山田ミネコ作品にあっては忘れてはならないラブリーな古代生物です。うん、実に可愛い生き物です。
イクチオステガは、一般的には「最初に陸上に上がった動物」と理解されているようであり、「誰もいない場所に初めて行った冒険者」というニュアンスを持たされる持たされることも多いような気がします。
しかし、実際はそのようなロマンチックな生き物ではないようです。(最初の四肢動物でもないようですし)
初期の潜水艦が、「海中を航行する艦」ではなく、「時々潜行もできる可潜艦=基本は水上艦」だったのと同じように、基本は水で必要な時に陸にも上がれる感じだったようです。
これはイクチオステガの特徴ではなく、水への依存度の程度の差こそあれ、両生類一般に見られる特徴であるようです。
両生類より
基本的に乾燥に弱いため、水辺などの湿った環境が生息域の中心であり、陸上で活動可能な体を持ちながら、生活や繁殖を水に依存した生涯を送ることからこの名がある。「両生」類の名は、水中生活と陸上生活の両方が可能という意味ではなく、両方が必要な動物であるという意味である(これが近年の両生類の減少に繋がっているとの指摘もある)。
さて。
このように考えると、デボン紀のイメージはまた変わってきます。
- 頂点に達した魚の繁栄は、両生類という新しいタイプの生き物も生み出した
- 両生類は四肢を持つ (「足っていいな かけちゃお!」「おててはいいな つないじゃお!」)
- しかし、まだ水から離れては生きていけない (家の外は一面の海って住みやすそう?)
むむ?
何やら括弧内の言葉を見ると、デボン紀がポニョと繋がってきたか?
宗介とポニョが見つけたデボン紀の魚はどういうものか? §
デボン紀について、もうちょっとぐらい知識を入れたいと思って近くの本屋や図書館を軽く見ていますが、結果はサッパリです。
昔の生物に関する本は圧倒的に恐竜だらけ。その傾向は、おそらく子供の利用を想定した図書館では特に強い感じ。
そういう意味で、デボン紀を求めて何の準備もなく本屋や図書館にぶらり行くのはあまり良い結果が得られないかも。
さて、私がインターネットを手放さない理由が2つあります。(他にもいくつかありますが本題と違うので割愛)
1つめは、古書や図書館の蔵書を容易に検索できるようになったこと。これによって得られたメリットははかり知れません。たとえば、XXという図書はYY図書館にはないがZZ図書館にはあって、現在貸し出されていない、ということが居ながらにして分かります。これが確認できれば、気楽にその本を見に行けます。(実際にそうやって図書館を利用している)
珍しい本になると都立図書館にしかないこともあり、 南武線に乗って都立多摩図書館まで行くこともあります。しかし、珍しい本が確実にあると分かって行くなら、けして面倒ではありません。何万円も出して古書で買うぐらいなら、時間と電車賃は安いもの。まして、古書でも買えないものなら……。
もう1つは、商業出版物等の世界で取り上げられる機会が少ない、あるいは全く無いマイナーなジャンルの濃い情報です。
たとえば以下のようなサイトです。
こういうサイトは、あらゆるジャンルの周辺に存在する可能性があります。しかし、大きく注目されることはまずありません。注目される余地があるぐらいなら、マスコミが扱うからです。
さて。ここからが本題です。
デボン紀の生物に関する情報は、まさに上記の2番目に該当しました。
ポニョに出てくる「ディプノリンクス」「ボトリオレピス」を求めて検索した結果、以下のサイトに到達しました。
古世界の住人・川崎悟司イラスト集
このサイトは各地質時代ごとに分類され、多数の生物のイラストと解説が書かれています。(一部は現代、あるいは未来生物)
デボン紀にも大きな割合が割かれています。
古生代・デボンの世界・川崎悟司イラスト集
ここには、もちろんイクチオステガくんもいます。
イクチオステガ
そして、ディプノリンクスとボトリオレピスも。
ディプノリンクス
ボスリオレピス (ボトリオレピス)
ボスリオレピスとボトリオレピスの違いは、読み方(カタカナ表記)の揺れであって、同じものと考えて良さそうです。
では、デボン紀には他にどのような魚がいたのでしょうか?
以下のようなダンクレオステウスの解説も書かれています。
アゴへの進化~そして究極の怪物
いやともかく上のリンクはクリックして、イラストを見てください。
大きさの比較として、何やら肌もあらわなお姉さんの絵が (笑。
FFゲーム画面風のイラストやRPG-7のイラストまで (笑。
堅物ではなく洒落が分かる愉快なおじさんのようです。
探してみるとシャアまでネタになっています。
生物史上最大の革命~カンブリア爆発
「見える! 私にも敵が見えるぞ!」って (笑。
盛り上がってきたところで、次回に続く。