実ははたと気付きました。
- 悪と侵略者は同じではない
- 単なる悪から侵略者に転換される瞬間を描いた映画がある
ちなみに、デスラーが地球を欲しいと思う瞬間は描かれていません。
しかし、ズォーダーが地球を欲しがった瞬間は分かります。彗星に「止めろ」と指示したのがその瞬間です。それまでは進路上にあって潰してしまうつもりだったのでしょう。つまり、デスラーが滅ぼしている筈だった星です。地球に執心しているのは、それまでデスラーであってズォーダーではなかった筈です。
そこで思い出したのは、宇宙からのメッセージです。これも、ロクセイア12世が地球を欲しがる瞬間が描かれます。金貸しの婆の記憶を覗いて美しい地球を欲しくなるわけです。
両者は以下の点で共通しています。
- 地球は美しいから欲しい
- しかし、それは遠くから見たり、他人の美化された記憶を経由するからであり、近くで見たら汚いことは観客みんながよく知っている
それにも関わらず、みんなで必死に地球を守るからドラマになるわけですね。
ということは綺麗だと思って侵略したいと思う敵の親玉って一体……という皮肉な状況を考えるのも楽しみですね。もし、侵略に成功していたら、汚染で汚れた地球に降りたっていったいどう思うのでしょうか?
ズォーダーの特異性 §
この「欲しがる」瞬間を描いた作品は実は多くない気もするのですよね。ヤマト関係でも、そういう瞬間を描かれたのはズォーダーだけではないか、という気も。
ちなみに、なぜズォーダーだけ特異なのかと言えば、おそらく理由はデスラーです。当初、ズォーダーの敵はテレサであり、デスラーの敵は地球という構造だったのに、デスラーが退場した後でズォーダーは地球を始めて意識したとも言えるから。それまでにも蹴散らすべき敵という認識はあったかもしれないけれど、領土欲の対象ではなかった訳ですね。
一方で、黒色星団やディンギルは地球を奇襲した時点で既に欲望を持っています。
新たなる旅立ちは地球に来ないし、ヤマトIIIでは地球は無くなっちゃうの?というわけで欲望を持つだけの商品価値がありません。
オマケ §
「ズォーダーだけ違うって、あんたどこまでズォーダーが好きですか」
「ははは。ズォーダーの良さが分かってきたのは最近だけどね」
「しかし、敵ですよ」
「都市帝国を放棄するぐらい追い込まれるまで、臣下を糾弾できない弱さが泣ける。強そうに座っているけど心が弱い。そこが泣ける」
「悲劇の主人公だね」
「いやいや、悲劇じゃないよ。自分で主導権を取ろうとしなかったからいけないのさ」
「というと?」
「サーベラーがデスラーに監視を付けると言ったとき、どうしてサーベラーを床に落として白色彗星帝国に無粋な女は不要だと言えないのだ。デスラーなら言えるだろう」
「ということはズォーダーは判断が良くなかった?」
「うん。良くなかったと思うな。だから負けて滅びるのが必然だ」
「それって」
「そうだ。ズォーダーが負けるのは必然だから、最後のとどめは誰が刺してもさほど変わりはない。ヤマトでもテレサの反物質の身体でも、あるいは島さんラブラブのテレサでも関係ないわけだ」
「そう思えばますますヤマトの特攻に意味はないね」
「そういう意味では、実はテレサの特攻にも意味はない」
「ズォーダーの心の弱さをずばっと指摘して負けを宣告してやれば自分から降伏したかも知れないものね」
「そうなれば、もしかしたら敗者ズォーダーの、部下に関する愚痴を古代が聞きながら酒を飲むような感じの未来があったかもしれないね」
「しかし、よくやるといえば宇宙からのメッセージも凄いね。何せ、醜いばあさんから美しい雪国の思い出が出てくるのだから」
「それで侵略を決意しちゃうというのも皮肉だ。あんな美しい光景の地球が残っているという描写は無い」
「そこがある意味で見せ場だよね」
「ガバナス戦艦が見せ場ではない、とは言わないが」
「やはり、侵略という行為の虚しさが良く分かるね。戦争を見て喜ぶタイプには向かない大人の映画だろう」
「ちなみに、さらばもカットが多いけど、宇宙からのメッセージもカットが多いので有名だぞ。上映当時から、明らかに映画本編にない展開の説明文や写真が出てきていた。ロクセイアの母親が逃げて引っ込む説明とか、あったような気がするな」
「結局、リアベの実が8個でリアベの戦士が8人というのは多すぎるんだよ」
「丁寧に描写している時間がない。というか、下敷きが八犬伝だから8人を削れないので、特撮パートを含む最後の展開を丸ごと削るしかない」
「それを削っても、それで時間が足りているわけではない。そういう意味で、やはりこれも説明不足のパターンだろうね。気持ちは入っているが上手く分からせることができていない。というか説明が足りない。完全に時間不足だ」
「この時代はそういうパターンが多いね」
「若いってことだろう」
「考えてみれば、ガバナス戦艦も船体の左右に四角形の屋根のあるフライトデッキって、ギャラクティカと構造が似通っているしね」
「ヤマトもギャラクティカも復活したのだから、いっそ宇宙からのメッセージも。宇宙からのメッセージ第2次銀河大戦!」
「それは無理だろう!」
「そんなぁ。エメラリーダさまぁ!」
