2010年08月07日
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湖川友謙論・さらばと、そして復活編

Written By: トーノZERO連絡先

「湖川友謙という人物は実はもっと高い評価を与えられてしかるべき、という気がしてきた」

「ヤマト復活編BDの映像特典の座談会を見たから?」

「うん。それもあるんだが、実はもっと根深い」

「というと?」

「復活編のキャラは十分に良かった。文句もない。素晴らしい。しかし、これは話の始まりに過ぎない」

「というと?」

「実は、さらばの時点で凄く絵が綺麗だったという印象が残るんだ」

「そうか。さらばは総作画監督:湖川友謙ってことだね」

「主要なスタッフとして参加したのはこれだけだからね」

「復活編とさらばだけだ」

「うん」

「ということは?」

「善し悪しは別として、ここに湖川カラーが出ていて、それは好感されていたんだ」

「なるほど」

「だからさ。当初、ガンダムの安彦良和という名前があって、それと比較して乾いた華のない地味な絵を描くのがイデオンの湖川友謙という印象だったけどさ。この印象がそもそも間違っていたわけだよ」

「というと?」

「安彦良和の代表作は何かは難しい問題だが、ここでは仮に機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編としておこう。湖川友謙の代表作はどれにしようか。イデオンの劇場版発動編としておこうか」

「うん」

「で、どちらが好きかという個人的な問題を語るとだな。文句なくイデオンになるんだよ」

「え?」

「ガンダムIIIってのは、なんか良く分からないイメージ映像でララァとアムロが語り合ったりするし、ロボットも人も宇宙艦もさして変わらないスケール感だし、描き込みの密度が上がっているだけであまり面白いとは思わない。でもさ、イデオンだとキッチンの首は飛ぶし、メカのスケール感も破格だ。ロボットには、人間よりも大きい存在感がある」

「設定サイズの違いじゃないの?」

「それもあるが、絵のレイアウトの方法論がそもそも違うのだろう」

みんな走れ! §

「ザブングルの最後はみんなで走るわけだが」

「そうだね。劇場版ではアーサーさままで出てくるし」

「でもさ。どこまでもみんなで走り続けることができるのは、おそらく湖川キャラだからだ」

「というと?」

「動いて演技するところまで、想定した上でデザインができている」

「他のキャラもそうじゃないの?」

「必ずしもそうじゃないのだ。走らせることはできるが、実は走り続けて絵になるかというと話は別になるのだ。走り出して止め絵にしておしまいというキャラも実は珍しくもない」

「じゃあ、他に走り続けて絵になるキャラって?」

「未来少年コナンとか」

「そうか。ザブングルで参考にしたというコナンか」

「ここで話が繋がってくる。別に湖川さんが宮崎駿と同じ考え方を共有しているわけではないだろうが、結果として方法論が似ている」

「なるほど」

「だから、コナンを参考にしたザブングルが湖川キャラであることに意味があるのだろう」

「逆に言えば、可能性としてはあり得た宮崎駿版ヤマトは、湖川さんの存在で成立しなかったとも言えるかもしれない。湖川さんがいたら、あえて他の誰かを呼ぶ必要はなかったのだろう」

でもヤマトは §

「でもヤマトではそこまでの個性は出ていないのでは?」

「プロだから、既存のキャラはきちんと似せるし、既存の路線を崩さないということもできる」

「うん」

「でもさ。それでもにじみ出てくる個性というものがあるわけじゃないか」

「なるほど。それが、さらばでは特に絵が綺麗だったという感想になるんだね」

「確かに絵の美しさという観点から言うと、永遠にもかなり感じる部分がある。完結編になるとビデオ処理が入ってあまり綺麗ではないのだけどね。でも、永遠にの最初の感想に綺麗という要素はない。技術的な話以上に、おそらく綺麗に見せるという湖川さんのカラーがフィルムに出ていたのだろうと思う」

「そして復活編だね」

「だから、復活編もやはり綺麗なんだ。というか、だからこそ他の誰でもない湖川さんが指名されて作品を背負ったのだと思う」

「そうか。単に昔の仲間だから、というわけでは無いのね」

「おそらくそうだ。指名する価値がある人物だったのだろう」

「でも、喧嘩して海に飛び込みそうな人だよ」

「そこも意味がある。そういう人だから、時代に穴を開けられる作品を引っ張っていける主要スタッフになれるのだろう」

「喧嘩して意見を通せることに意味があるんだね」

「それもあるが、喧嘩して第3の意見に至るということもあり得るからね。やりあうことは重要だ」

オマケ §

「そうか。やっと分かったぞ」

「何が?」

「雪がやられる瞬間の描写だ」

「意味もなく服が脱げるけど大切などころは見せない絵だね」

「あのシーン、おそらくキャラクターデザイン、総作画監督 - 湖川友謙だからこそ、あの絵がある。他の人が作画トップならああはならない」

「というと?」

「だからさ。ワープテストの時に雪の服が消えるような絵があるじゃない。成り行き次第では、ああいう感じの絵になっていったような気がする」

「でも、どういう絵にするかは演出側の要請じゃないの?」

「コンテが同じでも作画のやり方で印象はかなり変わるよ」

「そうか」

「ともかく、あのシーンは初見では雪が脱げちゃうことにばかり目が行ったが、もう1回見ると本当に驚くほど綺麗だ。それはさらばの全裸のテレサが驚くほど綺麗だったような話と同根なんだよ」

「そうか。下品にならずに脱がすことができるのが湖川カラーか」

「そう思うといろいろ筋が通るよ。他の総作画監督の時は女性キャラがあそこまでは脱がない。おそらく脱いだらエロくなってしまうのだろう」

「どうでもいいけど、イデオン発動編の最後もそうだ。下品にならずにみーんな全裸!」

オマケ2 §

「ガンダムIIIって、君の評価が低いね」

「うん。個人的には低い。ガンダム三部作ならIIがいちばん面白い。シャアのズゴックに逃げられた超シリアシーンなのに岩が落ちてきてガンダムの頭に当たるんだぜ」

「じゃあ、ガンダムIIIは見なくていいの?」

「いや、冒頭のキャメル艦隊戦だけは素晴らしい出来だよ」

「カイ少尉、戦果を期待します! ってやつだね」

「どこだ、ガンダムはどこにいるのだ! って迂回して真上から狙い撃たれてしまうところとかね」

「それで? なぜそこだけいいの?」

「そこだけ板野一郎の世界だから、ということらしい。同じ映画だが持ち味がまるで違う」

「板野サーカスの板野一郎ね」

「さて、ここで話は変わる」

「というと?」

「じゃあ、その板野一郎がスターダムにのし上がる第一歩はどこだったのだろうか?」

「イデオンらしいね。軽機動メカが本当に軽機動メカらしく素早く動いたって」

「では、イデオンの最も主要なアニメーターとは誰だろう?」

「あっ。そうか。湖川さんってことか」

「キャラクターデザイン:湖川友謙で、アニメーションディレクター:湖川友謙ということだ。湖川ワールドを母体にして飛び出したのがいわば板野ワールドだ」

「話がつながったね」

「それほど明確な継承性はないが、イデオンのキッチンの首が飛ぶような描写を前提にすれば、メガゾーン23PARTIIの敵メカが人間の身体がぐさぐさ貫くようなぐろい描写につながっていくのかもしれない」

「そうか、23もそこまでやる必要があるのかという描写だけど」

「イデオンで既にそこまでやる必要があるのかという描写を見ている訳だ」

「そりゃそうだ。発動編が始まってまだオープニングのうちにシリーズ最大のヒロインが登場して首が飛んで終わってしまうものね」

「見に行ったファンも愕然として言葉もない」

オマケ新たなる旅立ち §

「じゃあ、板野サーカスをヤマトでやったらどうなるんだろう」

「坂本! コスモタイガーは玩具じゃない! パンツ1枚で艦内一周!」

「いや、いくら板と坂が似てる字だからってそれはないない」

オマケよ永遠に §

「突然思い出した」

「何を?」

「ダンバインの頃、シーラ・ラパーナ姫に小言をいう爺になりたかった」

「他にも、剣を捧げる騎士になりたいとかほざいた若者もけっこういたみたいだね」

「みんな若かったのだ」

「それで?」

「ダンバインのキャラも、というかシーラ・ラパーナ姫も湖川キャラだ」

「おっと」

「しかも、主人公の2号メカであるビルバインもメカだけど湖川さんのデザインだし。終盤はもう湖川ワールドに浸れた作品だね」

「なるほど。メカまで」

「玩具化のためのメカだけどな」

「それはしょうがない」

「しかし、あらためて確認ために調べたらシーラさま凄いぞ」

「どう凄いの?」

  • 出番はそれほど多くないにも関わらず、制作者側でも彼女の作画を担当したがるアニメーターが続出する
  • シーラをデザインした湖川友謙自身も、彼女の初登場話「赤い嵐の女王」の作画監督を出来なかったことを悔やんだ
  • 出渕裕は彼女を愛する余り、メカデザイン担当の立場を逸脱してドサクサに紛れて作画しまくったといわれる

「ははは。出渕裕ってラーゼフォンの監督だろ?」

「脚本の力もあるけれど、やはりシーラさま大人気。ってか、みんなバカ。たかがアニメキャラなのにみんないれこんで」

「君もな」

「みんな若かったよな」

「でもさ。やっぱりこうして考えてみると湖川さんって偉大だな」

「だからさ。自信を持って言える。復活編は湖川さんで良かったんだ。それが良かったんだ」

オマケ完結編 §

「しかし、今なら良く分かる」

「というと?」

「赤い嵐の女王のシーラ・ラパーナさまというのは……」

「赤い嵐の女王?」

「登場エピソードのサブタイトルだ。それも覚えていたよ。上の文章にも出てくるけどな」

「うん。それで?」

「赤い嵐の女王のシーラ・ラパーナさまというのは苦言を呈する美少女なんだよ。相手の心にずばずば入り込むような直言を繰り返すある意味で嫌な奴なんだ」

「そうか。相手の心を見抜いて踏み込んでいくタイプは好みなんだね」

「そうだ。だから、山田ミネコにはまり込んでいくのも冬の円盤でタイムパトロールが主人公の少年の心にずばずば切り込むようなことを言うからだし、わがままフェアリー ミルモでポン!も、可愛い小妖精が相手の心にぐさぐさ切り込むような本音を言うからだし、結局そういうパターンのバリエーションであったわけだ」

「でも、可愛かった」

「そうだ。シーラさまは若い女性で見た目も可愛かった。膝に載せてオーラバトラーを飛ばせば直言の数々が飛んできて精神が崩壊しそうなリスクもあるが、そこがまた魅力というものだろう」

「ヤマトだとそういう本音のもの言いは佐渡先生が担うからギャグっぽくなるけど」

「シーラさまは若い女だからね」

「親の本音も見抜けず、徳川機関長を通信室に入れちゃう雪とは大違いだ」

「復活編だと美雪かな」

「主人公に対する糾弾者としての若い女性という意味では、シーラさまの系譜なのかもしれない。でも、年若いからパパの心に完全に切り込むにはまだ厳しいかな」

「でも、年若い女性が相手の心に切り込んでいくのはやはりシーラさまの系譜だね」

「そうか。復活編のいいところは、結句シーラさまの系譜にある若い女性に糾弾してもらえるという点にあるからだ。駄文を書いていい収穫を得たぞ」

「というと?」

「だからさ。シーラさまはダンバインでは徐々に凡庸な君主になってしまうんだ」

「うん」

「では、シーラファンはどこに行けばいい?」

「それは……どうだろう?」

「行き先がなかったのだけどさ。もしかしたら中年古代君になって、湖川キャラの娘に糾弾されるといい感じかもしれない」

「そうか。同じサンライズのロボットアニメだからといって、ガンダムなんちゃらを延々と見るよりも……」

「実はヤマト復活編で湖川ワールドに浸る方が遙かに満足度が高いかもしれないぞ。本当かどうかは一切知らないけどな」

オマケ復活編 §

「過去・現在・未来へと続く物理法則に逆らって、過去から未来へ転移する事をウラシマ・エフェクトといい、その時の影響によって超能力を身につけた者を、人はウラシマンと呼んだ…けどね」

「それで?」

「イデオン・ザブングル・ダンバインへと続く富野法則に逆らって、さらばから復活編に転移する事をヤマト・エフェクトといい、その時の影響によって超能力を身につけた者……はいないようである。けどね」

「ははは」

「いや本当に、シーラさまから古代美雪への系譜を湖川キャラという観点で付けてしまうと、まさに富野法則に逆らうヤマト・エフェクトのおかげと思うよ」

「ということは?」

「結局、ヤマト復活編はただ単にヤマトが復活しただけではなく、既に富野世界の一部も吸収してしまったと思えるな」

「なぜだろう?」

「おそらく、ヤマト世界の方が器がでかいからだろう」

「そうなの?」

「でも少しずつ分かってきた」

「というと?」

「結局富野アニメでいちばん印象に残るのはイデオン・ザブングル・ダンバインなんだ」

「え? ガンダムは?」

「湯水のように再放送されたガンダムの印象が強いのはある意味で仕方がないから除外すると、残るのは湖川キャラの作品群ということになる」

「Zのフォウとかも印象は強いんじゃないの?」

「印象は強いがあまり魅力を感じない」

「湖川キャラだと魅力があるの?」

「だからさ。ぶち切れて凶悪ではあるが、カーシャなら魅力はあるんだよ。あいつはギジェなのよ~ バッフクランなのよ!」

「なるほど。フォウにはあまり感じないけど、カーシャなら感じると」

「エルチとかコトセットもなんだかんだで印象に残るしね」

「主人公に印象的な凶悪な特徴を与えるという意味でも、コスモのアフロや、ジロンのどまんじゅうも凄いね」

「ダンバインになると割と普通の主人公だね」

「そこは、異世界の方が変な世界だから、普通の人間が入って行く意味があるのだろう」

オマケ復活編第2部 §

「いや、実は念のためにイデオンの情報をチェックしたら面白い話がでてきた」

  • キャラクターデザインには『無敵鋼人ダイターン3』でコロスを描き、富野に賞賛された湖川友謙が採用された。富野は「湖川の"女"の部分がほしいと思った」と述べている。

「どこが面白いの?」

「コロスはけっこう好きなんだよ。万丈のパートナー美女2人よりもね。コロスをいじめるのはだれだ~!」

「え? そうなの?」

「ドン・ザウサーはこう申しておりますと首領を言葉を代弁する幹部かと思いきや、最後の最後までドン・ザウサーは寝たままで、実はコロスが自分の言葉をドン・ザウサーの言葉と偽って指揮をしてたわけだよね。あっと驚くどんでん返しだ。海のトリトン系の最後にひっくり返る演出だと思うけど、良いキャラだったと思うぞ」

「話がまたつながってしまったね」

「意図しないが、つながってしまった」

「しかし、ダイターンなんて見てるんだね」

「そう。その通り! 再放送で全部見たぞ。しかも大好きだ」

「好きなの? 富野アニメなのに?」

「ギャリソン時田とか主人公メカに乗って操縦してしかも良い戦いをしてしまうとか、そういう世界観はヒーロー性の否定で大胆だ。大好きだぞ。あなたが落としたのはこのガンダムのDVDですか、このザンボットのDVDですかと聞かれたらもちろんダイターンと答えるだろう」

「ザンボットよりも好きなんだ」

「ってか、実はザンボットは全部見てないんだ。ザンボットの第1話をリアルタイムの放送で見てるのはちょっと自慢なんだが、でもほとんどは見てないんだよ」

「ってことは?」

「やはり、安彦キャラの恵子ちゃんよりより、湖川キャラのコロスなんだろう」

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