ヤマトに関するメッセージは一時はよく来ました。たぶん、"ヤマト 復活編"で検索すると私の文章が割と上位に来るから。もちろん、ランク付けは勝手に検索会社が行うもので、私は関与していません。SEO対策も特にやってません。
そういう前提で比較的よく来たメッセージも最近はさっぱりです。さすがに、復活編公開からかなり時間も経過したし、ヤマトと復活編でまだ喜んでるのは少数派に過ぎず、「それでもいいのさ」と開き直ってばく進するしかないという感じでしたが。
実は今になって「湖川友謙論・さらばと、そして復活編」に対してやや矢野屋さんよりメッセージが来ました。
名前: やや矢野屋
こんにちは。以前にもメッセージをお送りした者です。
湖川キャラについてのご考察を拝読し、大いに頷かせていただきました。
何から何まで同意です!
復活篇が湖川キャラで本当に良かった!
佐々木美晴さんが旧来からのヤマトファンにえらく評判悪いんですけど、彼女はシェリル+カーシャ+ハルルなんですよ。いいじゃん、ヤマトの世界にエゴ丸出しの迷惑女がいたって!戦後17年経ってるんだからさー(汗笑)
「ヤマトの世界にイデオンキャラを持ってきてヤマト世界の境界線を押し拡げる」という力技を発揮できたのは、湖川キャラの存在感がハンパないからだと思います。
ただ、シーラ・ラパーナにそれほど人気があったというのは意外でした(汗笑)
個人的にダンパインの女性キャラで印象的だったのは、ガラリアやキーンでしたから。
そんな私はザブングルでは圧倒的にラグ派です(笑)
ああ、だから美晴姐さんが気に入ってるんだなあ……
乱文失礼いたしました。
今後のご更新も楽しみにしております。
目から鱗が落ちました。
そうか。佐々木美晴先生とは、シェリル+カーシャ+ハルルなのか。ヤマト的な登場人物からイデオン的な領域にはみ出したキャラなのか。
うん、確かにそうかもしれません。
ヤマト世界の旧来の女性というのは、みな上品で控えめです。戦闘への直接的な関与もあまり無ければ、意見もしません。第1作のスターシャは待ってるだけだし、テレサも待っているだけ。最後の最後で古代に一緒に行きますと言うけれど、行った後の具体的な描写はありません。ヤマト2のテレサも白色彗星や超巨大戦艦相手に何をしたのかはっきりしません。新たなる旅立ちになると始めて戦闘行為に直接介入して来るスターシャが見られますが、戦ったというより自殺です。サーシャ(2代目)は扉を開けるだけで、サーダもほとんど居るだけキャラです。クイーンアクエリアスになると居るのかどうかさえ分かりません。
メインヒロインの森雪にしても、ワープの航路を計算したまえと言われて計算する受動的な立場であり、「あの基地を叩きましょう」といった戦闘的なことは言いません。
まとめると以下の通り。
- お上品
- 控えめ
- 戦闘に関与しない
- 肌が白い
- 金髪ないし明るい色が多い
- 運命を受け入れちゃう
そこから考えれば、復活編のヒロイン像は異質です。
- 患者を放り出して戦闘機に乗る女医 (黒髪)
- パパを糾弾する娘 (黒髪)
- 金髪ではあるが、金と言うよりむしろ白いカラーの真帆
- 色黒の異星の女王
- 運命に逆らっちゃう
しかし、この異質さは湖川キャラの系譜から見ると実は異質とも言えません。
逆に森雪の方が浮いてしまうぐらいであり、序盤であっさり退場してしまうのもある意味で当然です。代わりに出てくる娘は、大人を糾弾するきつい少女であり、湖川キャラなら当然のパターン。男から見て気持ちが安らげるようなタイプの女性は皆無。
もっとも、従来からのヤマトの世界でも、本当にスターシャや森雪が、男にとって都合の良いタイプであったかは疑問ですが。スターシャも放射能除去装置を自分で取りに来いと無理難題吹っかけてくるし。
それはさておき。
沖田を失い大人になった古代が乗り出す海とは、実は人間関係の海に他なりません。その海には、勝手な連中ばかりが揃って、好き勝手なことを言い立てます。全てを満足させることはできません。島の後釜の小林は戦闘機に乗りたくてうずうずしているし、相原の後がまはいつでも腹が減ってるし、自分の後釜はやたら戦いたがるから殴るしかないし。更に輪を掛けて大変なのが女性の扱い。女性は殴れないが、わがままは男性以上。そんな連中と付き合って上手くやっていくのは大変。そういう大変さを描くための湖川キャラなのかも。いやほんとに、古代的には医者は医務室でいつでも待機していて欲しいでしょうけど、医者として乗せてしまった以上はどうしようもありません。そもそもヤマトは真田がお膳立てして準備したもので、古代はおそらく乗組員の人選に関与していませんが、今更この医者はダメでしたと真田にも言えないでしょう。
しかし、ヤマトを放り出して出撃してしまうダメ操縦士と、ヤマトを放り出して出撃してしまうダメ医者が、けっこう良いコンビなのは必然なのかも。いくら、ダメ操縦士が真帆に告白してから出撃しているとしてもね。しかし、エルチに告白しつつ実はラグと一緒の方が上手く行くジロンみたいな関係なのかも。
いやー、青春だねえ。青春ドラマだねえ。
改めて考えると §
かつてヤマトは常識の破壊者として出現し、見事に常識をぶち壊してくれたわけです。
そして、ヤマト復活編において復活したヤマトが破壊した常識とは、過去のヤマトの破壊に他ならず、それゆえに常識破壊向きの湖川キャラこそが選ばれたとも言えるかもしれません。
いや本当にカーシャとか、一見ただの凡庸なヒロインだけど、ぜんぜん付き合って気が休まるタイプじゃないしね。これがホワイトベースのおふくろさんと同じ声とは思えないぐらいの破壊力。
と、ここで実は1つの踏み絵あるいは境界線が現出します。
つまり、ヤマトファンには2種類あるということです。
もちろん、前者は「復活しても同じであって欲しい者達」であり、後者は「過去のヤマトすら過去の常識として破壊して欲しい者達」となります。復活編は実は厳密には後者のためのヤマトだったのかもしれません。
オマケ §
シーラ・ラパーナ人気が分からなかったという感想はもっともだと思います。たぶん、シーラとグランガランよりもエレとゴラオンの方が出番が多かったような気がします。しかも、グランガランは明らかに設計思想が古くて頼りになりません。
ザブングルではラグ派ですか。じゃあ、うちはエルチ派ということにしておきましょう。え? 大砲撃ってる踊り子軍団? うーむ。
オマケ2 §
「というわけでだ。重要なポイントはどこにあると思う?」
「どこなの?」
「愛だよ。愛」
「愛? どういうこと?」
「カーシャとかさ。すげえきつい性格で、目の前にいたらぼこぼこに罵倒されるんだぜ。キンキンの甲高い声でさ」
「うん。そんな雰囲気だよね」
「だからさ。そういう可愛くないキャラを愛せるのかってことだ」
「君は愛せるの?」
「当然だ。スペース・ラナウェイ!」
「しかし、ヤマトの感想でカーシャを愛せるといってもねえ」
「だからさ。古代は美雪を愛せるんだよ。散々本人も後悔している痛いところを突いてくるいやな少女だけどさ。ぼこぼこに罵倒されても反撃せずに、それでも愛せるんだ」
「そうか。そういう人間的な大きさがあるから、美雪が最後に頼るのは古代なんだ」
「そうそう」
「でもさ、たとえ話が全部古いよ」
「主人公の名前が古代というぐらいだから、話が古くて当たり前」
「おいおい」
「じゃ、次はデボン紀の話でもするか」
「それはいいから」
「でもさ。耳が痛くなるような声で叫ぶカーシャや、酒でぐでんぐでんに酔っ払ったシェリルを愛せるかというのは1つのハードルかもしれないぞ」
「ハードルねえ。それを超えると先に何があるの?」
「アニメの卒業、そして本当に叫んだり酔ったりする家族の面倒を見る行為だろう」
「話がえらくリアルだね」
「映画というのはリアルの投影だからね。あえて逆さまに写すこともあるけど」
「じゃあ、こちらも痛い話をしよう」
「なんだい?」
「君はイデオン後に卒業できたの? イデオン後にもアニメを見ていたようだけど」
「うん。いい質問だ」
「イデオン後に卒業できたのかと問われれば、実は卒業できた」
「でも、ザブングルとかダンバイン見てるじゃん」
「だからさ。同じ立場ではもう見てないんだよ」
「え?」
「イデオンまでと、ザブングル以後では見ている立場が違うんだ」
「もうちょっときちんと説明してくれよ」
「イデオンまでというのは、基本的に見たいから見るということで、余りひねりも工夫もない理由で見ていた」
「うん」
「しかし、ザブングル以降はシナリオの作り方、物語の作り方の勉強という面を割と具体的に意識しながら見ていた」
「それってどういうこと?」
「まだ学生だったけどさ。小説を書くとか、アニメのシナリオを書くという仕事を割と真剣に意識し始めたということさ。まあ実際には学校の卒業後に仕事としてアニメ業界は選ばなかったけどね。でも、それよりも遙かに前の時点ではある程度意識してアニメを見ていたわけだ」
「あっと驚く告白話だね」
「だから、単なる消費者としてアニメを見る行為は、実はイデオンぐらいで卒業しているんだ」
「そんな話は始めて聞いたぞ」
「自分でも始めて気づいたぐらいだ。確かにイデオン後に変わったってね」
「それで?」
「そういう観点で言うとね。ザブングルはまあいいだろうけど、ダンバインはもうちょっと違う内容にできたのじゃないか、という感想はある」
「というと?」
「小説でいわゆるヒロイックファンタジーはけっこう読んだけどさ。その感想で言うと、巨大ロボットも地上に出てくることも、そういうギミックが無くても物語は成立したのではないか、と思う。というか、ああいう話は主人公の筋肉で進めるべき話であって、オーラバトラーそのものが不要だったのではないかという気もする」
「でも、ファンタジー的な世界観を取り込んだ画期的な第1作だからさ。やむを得ないんじゃない?」
「そうじゃないんだ。テレビアニメとしては目新しいが、行くところに行けば昔からゴロゴロそういう作品があって目新しくないんだ」
「そうか。テレビでは他に比較対象がないけど、君の目には比較対象だらけということだね」
「うん」
「じゃあ、ヒロイック・ファンタジーといえば具体的に何が好き?」
「当時の趣味でいうと、ウィッチワールド・シリーズ。アンドレ・ノートン。挿絵はもちろん武部本一郎画伯」
「これはかなりマイナーだね」
「でも、自分でもはっきり分かった」
「というと?」
「自分にとっての美女の基準はまず武部本一郎美女なんだ」
「うん。それで?」
「武部本一郎展をやったのが弥生美術館。弥生美術館と一緒にあるのが竹久夢二美術館。そして、昭和の竹久夢二美女と言われたのが松本零士美女」
「見事にヤマトにつながったね」
「世界はこうしてつながっているのだね」
「なるほど」
「でも、安彦良和美女はこのラインに繋がってこない」
「じゃあ誰がつながってくるの?」
「同じ美術館のやなせたかし展というのは見に行ったことがある」
「アンパンマンの?」
「そうだ。ニャンダー仮面のやなせたかし先生だ」
「それは意外だね」
「ほかに、見ていないが同じ美術館で安野モヨコ展もあったらしい。安野モヨコ美女もつながる」
「へぇ」
「ただのカンだけど、おそらく境界線を引くとすれば湖川先生も同じ側だろう」
「絵のタッチはかなり違う気がするけどね」
「でもさ。実はやなせたかし先生のニャンダー仮面にしても、安野モヨコ先生のシュガシュガルーンにしても、特に高く評価してる作品なのだよ。それがこうして繋がってくるのは凄く意外で驚いている」
「気づいてなかったの?」
「うん。書いて始めて気づいた」
「では、次回のヤマト感想は?」
「次回ヤマト感想『実は旧ルパンとヤマトは似ている』 スペース・ラナウェイ!」
「ラナはコナンのキャラで旧ルパンのキャラじゃないけどね」
「コナンならいいが、サジタリウスのラナは、ただのカエルみたいなおっさんキャラだぞ」
「殺人的な衝撃だね」
「君は生き延びることができるか」
「かくして、コナンくんはランと改名したヒロインをパートナーにランの父親に麻酔銃を撃って殺人事件を解決するのであった」
「って、それはコナンはコナンでも別のコナンや」