「実は重大なことに気づいた」
「それはなんだい?」
「おいらは、子供の頃、アンチ正義派だった。仮面ライダーで、悪の組織がコツコツと積み上げて成立した作戦を、たかが殴る蹴るの暴力で阻止されてしまう理不尽が憎かった」
「殴る蹴るって?」
「ライダーパンチ、ライダーキック」
「ははは、そういう意味か」
「うん」
「じゃ、なぜ憎いと思ってしまうんだい?」」
「理由はいろいろあるが、腕力が強ければあまり考えない人でも影響力を発揮できることを骨身にしみて分かっていたからだろう」
「そうか。だからポリマー派ではなくホラマー派なんだね」
「実は、ここからが本題。本を整理していたら、妹ガンダム1巻が出てきた」
「ジオン空手でガンダムに勝つという話だね」
「実はさ。読み返してみて、この作者の徳光康之先生も、同じらしいと気づいた」
「ええっ? 悪の味方なの?」
「悪の味方というのは正確ではない。むしろ、正義という茶番の敵ということだ」
「理由は?」
「以下にまとめてみよう」
- ジオンが好き (ガンダムが正義ならその対極だ)
- 敵であるレンポーマンは正義の味方レインボーマンとガンダムのパロディ
- 敵であるレビル2世は正義の味方のバビル2世のパロディ
- 敵であるガンダムマン78は正義の味方のウルトラマン80のパロディ
「つまりさ。ネタとして正義が常に敵にまわるんだよ」
「そうか。それは屈折しているね」
「そういう屈折をしているのは自分ぐらいかと思ったら他にもいたようだ」
「それで、それがヤマトの感想とどう関係するの?」
「いい質問だ。ヤマトの良いところは、ヤマトが戦う理由として正義という2文字が無いことだ。綺麗さっぱり無い。愛はあっても正義はない」
「ええっ?」
「ヤマトが戦う根拠は、もっと複雑なんだ」
「というと?」
「たとえば最初の航海では人類が生き延びるためというのが理由だ。そこに茶番はない。単なる生存本能だけで正当性が分かる」
「他には?」
「新たなる旅立ちだと、ヤマトは戦場に乗り込んで迷わずデスラー側に立つ。しかし、黒色星団は悪とは言えない。いきなりデスラーに攻撃されて戸惑っているに過ぎない。いきなり攻撃されたので、反撃しているに過ぎない。この状況下で、デスラーに味方することは正しいことをしているとは言えない。しかし、ヤマトは最初から迷わずデスラー側だ。なぜかといえば、ヤマトは困っている隣人を助けに行っただけだからだ」
「でも、戦争のためのエネルギー欲しさに戦闘している黒色星団と戦うのはヤマト的な正義ではないの?」
「うん。そうかもしれない。でも、その正義はスターシャからの強烈なだめ出しを食らっておしまい。肯定はされなかったんだ」
「イスカンダリウムも渡せないがヤマトにも撃たせないわけだね」
正義の否定 §
「さらばだとさ。大統領が言っていることが正義なんだけどさ。うわべだけ綺麗なことを言っていても実践する気はさらさら無い」
「だから防衛会議で古代が怒っちゃうわけだね」
「あの演説を聴けば、まず困っている人がいれば助けに行くのは当然だと思ったんだろう」
「でも実際は地球を守る気しかなかった」
「だからさ。さらばは特に正義の茶番を暴く内容なんだよ」
「本物の正義を遂行しようとした古代は、茶番の正義に従えば、反乱者になってしまうという矛盾を露呈させたということだね」
「しかし、軍人であれば指揮系統に従うことが軍人の正義であり、反乱は規律的に間違った行為なのだ。まあ独断専行という言葉もあるけどそれは横に置くとして」
「古代の行動は正義とは言えないってことだね」
「そうだ。だから、古代は正義と不正義の矛盾の溝に落ち込んでいる」
「それでも行動できるのはなぜ?」
「だから愛だ。戦う根拠が愛にあるからだ。正義ではなく愛だからだ」
「なるほど。だから愛の戦士達」
「わかったかね?」
「あい」
オマケ §
「で、愛のために戦わないで茶番に付き合うとどうなるか分かるかい?」
「なんだい?」
「あまりに哀しい」
「愛の戦士達ならぬ哀戦士ってオチを付けたいわけか」
「哀の戦士レンポーマンかもしれないぞ」