「ハニーハニーのすてきな冒険の話を少ししたが」
「うん」
「白土武を反骨の人であると捉えると、すっきり解釈できることに気付いた」
「というと?」
「良いことでは無いが、ネットでちらっと見てしまったのだが、あらためて見るとハニーハニーには以下の特徴がある」
- かわいいヒロインがドレスで踊ってもずっこけて美しくない
- 2枚目が3枚目扱いされる
- 敵が間抜けであり、むしろ感情移入できる余地がある
「これがどうしたの?」
「結局さ。ポリマーよりホラマーが好きな子供の趣味にはジャストミートしたってことだ」
「は?」
「つまりさ。どういうことか説明しようか?」
「頼むよ」
「それ以前の女児ものは、キャラクターの立ち位置が決まっていて、その形式からの逸脱が許されなかったのだ。たとえば、魔女っ子メグちゃん。主題歌で、2つの胸に膨らみは何でもできる証拠なのと歌っているのに、本編では何でもできない。ウィンク1つで男の子はメロメロにならない。結局、物語の形式が要求する枠組みから逸脱できないからだ」
「むう」
「そういうキャラクターの立ち位置を破壊して、位置づけをずらしていったのがハニーハニーの功績であったのだろうと思う。そして、そのような路線を正統に踏襲したのがミンキーモモであろう」
「ミンキーモモも立ち位置が違うの?」
「そうだ。最初に見たミンキーモモは、カンフーアクションを見せる婦長というありえないシーンを含んでいた。翌週見たミンキーモモは伝説的な婦警に変身する話で、婦警になったヒロインから犯人達は逃げるはずなのに寄ってくる。既に決まり切った枠組みが壊れている」
「そうか」
「まあ、そういう意味ではミンキーモモの枠組み破壊は、ゴーショーグンにルーツがあるともいえるけどね」
「どうして?」
「ゴーショーグンは、ヒーローであるはずの3人組がプロフェッショナルであり、雇われたので戦っているだけ、という特徴がある。そして、子供の視聴者サービスでなぜか一緒にいる子供の方が実は新しい人類に進化する主役であったという立場の倒置がある」
「そうか」
話は続くよ §
「更にWikiPediaの白土武の経歴から一部引用しよう」
- 1984年 - らんぽう(コンテ)
- 1984年 - 北斗の拳(コンテ)
- 1985年 - ゲゲゲの鬼太郎(第3期)(演出)
- 1985年 - ハイスクール!奇面組(コンテ)
- 1987年 - ミスター味っ子(コンテ)
- 1988年 - 闘将!!拉麺男(演出)
「鬼太郎とか奇面組とか、けっこう通俗的な有名作画並ぶね」
「You Know I wont you! しかし、今でこそ当たり前に思えるタイトルも多いが当時の基準で考えるとそうでもない」
「えっ?」
「らんぽうや北斗の拳が常識破壊的であったのはまあいいだろう」
「うん」
「まず、ゲゲゲの鬼太郎(第3期)。確かに京極夏彦が喝破していたと思うのだが、1期2期の鬼太郎は人間が妖怪の世界に越境するのだが、3期鬼太郎は妖怪が人間の世界に越境する話である。つまり形式がそれまでと全く違うのだ。ああ、ユメコちゃん」
「えっ?」
「ハイスクール!奇面組は、変な顔の5人組が主役を務めるというそれまででは考えられない内容なのだ。零くんぶつじょ」
「むぅ」
「ミスター味っ子は、最終的にはやっきになって修正しようとしたが、主人公の母親である子持ちの未亡人をヒロインとして魅力的に描いてしまう常識破壊を行っていた。ああ、法子さん」
「は?」
「ロボコック? アジババと40人のシェフ達? ウィーン少年料理団? 危ない米本さん、後ろから霊幻料理が襲い来る! よーし、みんな揃ってペンタゴンの地下食堂で勝負だ! 美味しいよ!」
「じゃ、闘将!!拉麺男はなんなのさ。キン肉マンの拉麺男人気に便乗しただけじゃないさ」
「当時の周囲は、どうせ視聴率が落ちたらキン肉マンが出てくるのだろう、と酷評する者ばかりだった。しかし、出てくるわけが無い。内容は、超人レスリングものではなく、過去の中国を舞台にしたストイックな格闘修行ものだからだ。偉そうに語る者ほど実態からかけ離れてかえって失笑を買うという現象を典型的に見せてくれた」
「つまり、キン肉マンという枠組みをぶち壊してまったく違うことを目指した作品ということだね」
「そうだ。結局、白土武は反骨の人であり、そういう流れに親和性が良かったのだろう。そんな気がするよ」
「それが重要なの?」
「そうだ。なぜならおいらは以下のようなポリシーだからだ」
- 鬼太郎は3期
- 奇面組大好き。両国ではやっつけ隊の基地を空中に発見してご満悦
- ミスター味っ子大好き。と言うか法子さん最高。通!
- 闘将!!拉麺男はキン肉マンより好き。格闘アニメへのこだわりのルーツの1つ
「わははは。親和性バッチリじゃないか」
オマケ §
「結局、女児ものの主流はプリキュアに代表される新新世代になり、ハニーハニーをおそらく始祖とする新世代は滅んでいく」
「うん」
「でも、シュガシュガルーンはおそらく先祖返り的に奇跡的に生まれた新世代の末裔なんだろう」
「そうか」
「女王候補のライバルは仲良しの親友であるが、そこにどす黒いどろどろした世界がにじみ出てくる。ママは黒猫にされていて助けてくれない。愛した男は敵。どうしようも無いどろどろを解決しなければ先に進めない。そういう良いアニメであった」
「そうか」
「だから、心の栄養になるような女児ものをやらねば、という思想は、新新世代の安楽なお約束の世界に堕落したくないという心意気なのだろう。その点をおいらは買った」
「その点か」
「だからさ。ヤマトでも巨大ロボット出せば安易に落ちるのは簡単なんだよ。ヤマト強攻型になってパンチを打ち込んでダイダロスアタックすれば、目先の人気は取れる。でも、ヤマトでのロボちゃんはスカートめくって酒飲んでドリルミサイルを逆回転してくれるだけ」
「結局、人間が問題を解決しないとダメだって事だね」
「そうだ。それが心の栄養になるような作品になる」
「敵艦に突っ込んでもミサイル撃ってオシマイじゃなくて、デスラーとミルのいるデスラー艦を走らないとダメだって事だね」
オマケ2 §
「どうでもいいけど、YP2011ヤマトファンの集いのゲストの増永計介さんって、プレステのゲーム版で可愛いミルをデザインした人なんだよね」
「えっ?」
「あのミルをデザインしたあのお方だ、と思いながらありがたやありがたやとステージを見てたぞ」
「あれがいいの?」
「男らしいミルなんてミルじゃない。やはりオカマ的な路線を突き詰めた線が細い可愛いミルがいいミルだろう」
「増永ミルがいいってことだね」
「そうだ。それこそあえてミルに値する良いミルだ」
「みるみるオチがついたね」
オマケIII §
「サーベラーがあんな性格だから、白色彗星のヒロインはやはりミル」
「そうか。サーベラーなら大帝を裏切るのも平気だけど、ミルはちゃんと大帝からお預かりした駆逐艦を大切に思ってくれたものね」
「デスラーは撃っちゃったけどね」