「小林監督代行や出渕総監督と同じ立場に立つって」
「1億分の1ぐらいな」
「なんて小さい」
「委細はここに書いた通りだ」
「何が起きたんだ?」
「自分の考えた用語が、ガンダムのオフィシャルに取り込まれているらしい」
「つまり、小林監督代行や出渕総監督は仕事として考えたデザインがオフィシャルの一部を構成しているように、君の考えた言葉もオフィシャルの一部になったということだね」
「まったく予想外だよ」
「なぜそうなったんだい?」
「おそらく、『誰も考えなかったから』だろう」
「えー」
「ガンダム人気は基本的にガンダム人気でありMS人気なのだ。だからガンダムにはいちいち型式場号が設定される。MSには型式場号が設定される。それらに関連するものにも型式場号が設定される。だからガンダムはRX-78でザクはMS-06だ。コアファイターはFF-X7だ」
「それで?」
「でもさ。人型ではないメカには誰も強い興味を示さない。誰もあまり本気で考えない。辛うじてボールまでは考えるがそこまで」
「どういう意味?」
「たとえばドップとかガウのことは誰も本気で考えない。とりあえず、ガウっていう名前があるだけで満足してしまうが、もちろんミリタリーテイストで推し進めるなら型式番号がないとおかしい。呑龍という馴染みやすい名前があっても、百式重爆という名称も存在する。それがミリタリーなテイストってものだ」
「なるほど。それは、ガンダムのファンが持つ興味の対象がいびつだってことだね」
「それはガンダムのファンに限らないよ。ドイツ戦車にしか興味無いミリタリーオタクだって多いし、そういう人たちが十把一絡げで『じ~ぷ』で全てのソフトスキンを片付けちゃったりするし」
「えー」
「そこで、『それジープちゃうやろ。フォードのマットやろ』と突っ込み炸裂」
「ぎゃふん」
「だからさ。ソフトスキンは詳細に区別しなくていい、というタイプの人はガウもドップもそれ以上突っ込む必要を感じていないわけだ」
「突っ込む人は少数派ってことなんだね」
「まあ、砲塔が空を飛ぶ戦車とか、イロモノすぎて真面目に考えたくはない人が多いのだろう」
「それを言ったら、そもそも巨大ロボットがイロモノだろ」
「けど、ガンダムのファンはそう思わない」
「でも君は砲塔が飛ぶ戦車について考えたんだろ? なぜだい?」
「その方が面白いからだ」
「えー」
「みんな大好き無敵のガンダム君なんぞ、考えたって面白くも何ともない。ガンダムのライバルのザク君も面白くない。ザクが行進するといつの間にか踏みつぶされている家について考える方がよほど面白い」
「君は一生ガンダムには乗れないな」
「いいもん。乗りたいのはヤマトなんだし」
まとめ §
「それで、結局どんな気分なんだい?」
「うーん、割と普通かな」
「嬉しいとか悲しいとか、何かもっと凄い感情は無いの?」
「さあ。良く分からないな」
「立場は何も変わってないってことだね」
「そうそう。誰かが褒めてくれるわけでも無いし、けなされるわけでもない。何も変化は無い」
「それだけ?」
「強いて言えば、ヤマトファンなのでガンダムにいくら関係ができても関係ないや、って気分」
「ぎゃふん」
「たとえば、自分で考えた宇宙戦艦がワンカットでもヤマトに登場したら大事件だと思うけど……」
「ガンダムに自分が考えた型式名がテロップで出ても感慨無しか」
「まあそもそも可能性だけどな」
オマケ §
「呑龍という馴染みやすい名前があっても、百式重爆という記号も存在する。それがミリタリーなテイストってものだ」
「そこで金色のMSを連想したガンダムオタクは?」
「それがZガンダムなテイストってものだ」
「ぎゃふん」
オマケ2 §
「呑龍という馴染みやすい名前があっても、百式重爆という記号も存在する。それがミリタリーなテイストってものだ」
「そこでザンダクロスを連想したドラえもんファンは?」
「バレエでも踊っていてくれ」
「リルル~」