2014年09月02日
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【番外】コミックに見る超えられない壁の問題

Written By: トーノ・ゼロ連絡先

「面白い事例に出会ってしまった」

「それはなんだい?」

「絶版マンガ図書館に以下のコミックがあったので、何となく読んでみたら非常に面白い。しかも示唆も多い」

「このコミックの要点はなに?」

「連載1回ごとに面白かったか投票させ、その割合と実際に寄せられた意見を掲載している。またそれに対する作者のリアクションも載せられている」

「それさえ分かれば読まなくてもいいの?」

「いいや。読んだ方がいい。作者の悪戦苦闘の経緯が分かるから。その経緯こそが重要なのであって、要点説明は実はどうでもいいから。単なる外枠の説明でしか無く中身の説明になっていないから」

  • 読書タイム (流し読みできないから普通のコミックの2倍以上時間が掛かるよ)

「では君が感じたポイントはどこなのだい?」

「アニメクライシス1983論、アニメクライシス21C論とはアニメ化には2つの超えられない壁があることを示した。1つは業界の壁であり、もう1つは視聴者の壁だ」

「うん」

「実はこの【なにがオモロイの?】というコミックは、出版界にもある2つの壁を露呈させてしまっているという意味で興味深い」

「壁の位置は違うのだろう?」

「そうだ。壁の位置はアニメとコミックでは違う。しかし、やはり壁はあった」

「では、その2つの壁とはなんだい?」

「編集部という壁と、読者という壁だ」

「つまりなんだい?」

「志が高すぎて、何をしているのかすら分からない人が多く出たのだが、コミックは表面的に分かりやすいので分かってしまうことができる。つまり、分かっていないのに分かってしまった人達の存在が浮かび上がってしまったのだよ」

「えー」

「だからさ。問題は究極的に【面白い】か【面白くない】かに還元される。読者のリアクションを見ながら進路を修正していけば、読者が【面白い】と思う作品に収斂するはずだ……という作者の目論見は一見正しいように見える。【分からない】と言われたら、分かるように描くだけだ。【面白くない】と言われたら何が通じなかったのか、何を面白いと思うのかを考えれば良い」

「ちょっと待て。【一見正しいように見える】ってトゲのある言い方だぞ」

「そうだ。実はこの前提が間違っていることが途中で露呈する。実は【面白くない】という言い方は、読んで面白くなかったという感想ではない場合がある」

「じゃあ、どんな時だよ」

「相手を叩く時だ」

「なぜそんなことをするんだよ」

「出版物を出している漫画家を叩ければ、叩いた俺って漫画家より賢いという優越感に浸れるはずだからさ」

「分かったぞ。その快感が欲しい人は、まず叩けそうな相手を探して叩くのか」

「そうだ。その際【叩けそうな相手】として相原コージさんは発見されてしまったのだろう。しかし、それなりのプロがそうそう隙のある作品を描くわけが無い。それは【選択された表現方法】であるはずなのだが、そもそも何を描いているのか、そのためになぜその表現方法が選択されているのか、という部分を考えることなく、分かりやすい表現だけをつまみ食いして分かった気になると叩けてしまうのだよ」

「分かったぞ。つまみ食いでは全体像が見えないわけか」

「そうだ。ソフトクリームのコーンだけ食っても冷たいわけがない。しかし、コーンだけつまみ食いして【冷たくない】と文句を言うタイプの人達が意外と多い」

「それが読者の壁だね」

「そうだ。問題を一般化すれば、要するに読者は自分で自分が分かっているとは限らないし、それを上手く表現できるとも限らない。アンケートで満足度や売れ行きを図ったときにマスとしてやっと傾向が出てくるだけだ。まあ個別の意見にはいくらでも重要な示唆が隠れているけれどね。でも、読者の意見そのものが意味を持つとは限らない。そこには何か重要な情報が隠されているかも知れないが、それは読者にとって、無自覚かもしれない」

「ならば編集部の水準はどうなのさ」

「出版社の編集部はそれはそれでプロ集団なので、読者よりもずっと水準は高いだろう。日々様々な作品を目にしているわけだからね」

「でも限界があるわけ?」

「通俗的な雑紙の出版が扱うことができる限界は存在する。読者を無視した表現は掲載できないのだよ」

「それってどういうこと?」

「だからさ。本物のアートは載せられない。コスト負担に耐えられないし、読者も付いてこない。抽象絵画なんて載せても意味が分からないと怒られるだけ」

「でもさ。同じことをばかりやっていても飽きられちゃうじゃない」

「そうだ。だから、新しいセンスを持った新人の発掘と、掲載作品の水準アップは必須の要請だ。しかし、これが行きすぎると読者の支持を失う。たとえ、上手く作品の水準を上げられても上げすぎると読者の支持を失う。どれほど水準を上げても、読み取ってもらえなければ無いのと同じなのだ」

「そうか」

「しかし、【無いのと同じ】とはまだマシ。本当はもっと先がある」

「それはいったいなに?」

「挑発、喧嘩を売っていると見なされると、一部の読者が敵になる」

「敵にはしたくないね」

「そうだ。相手はお客様なのだからね。敵にまわすのは愚策だ」

「なんで敵にまわっちゃうの?」

「真摯に批判している相手の批判を無視した時だな」

「えー」

「当然、実際には批判たり得ていないから無視されるだけなのだが、本人は真摯に批判しているつもりだ。誠意があるのに無視されれば怒ることもあるだろう」

「困った問題だね」

「そうそう。よくあるパターンだけどね」

「よくあるのかい!」

「あるいはね。分かってしまったはずのコミックを分かっていないと薄々察してしまった時だね」

「それで敵になるのかい?」

「そうさ。真意を読み取れなかった君は馬鹿だね。あるいは、真意を読み取れない君は馬鹿だね、というメッセージを読み取ってしまうと彼は敵になる可能性がある」

「そんなメッセージあったっけ?」

「無くても読み取れるのが、読者というものだ。【どこにも書かれていない文章】に怒っている読者も、書いてあることなのに【書いていない】と怒る読者も見たことがあるぞ。典型的なパターンだ」

「なんてこった」

「つまり、敵ではない読者が勝手に敵になるパターンだね。これはどうしようもない」

「表現を分かりやすくすればいいのかい?」

「それも限界があるんだよ。絶対に間違わないようにしても、誤解する読者は誤解する。読む前に先入観を持ってしまうとね。それに沿って読んでしまうんだよ」

結論 §

「じゃあ結論を」

「このコミックは2000年頃らしいので、広義のアニメクライシス21Cに近い存在だと言える。コミックではあるが、アニメクライシスの症例を上手く表出させているという意味で、非常に有意義な1冊だ。これが無料で読めるのだから、良い時代になったものだ」

「それで君の意見は?」

「巻末に載っている著名漫画家の皆さんと大差ないので、そこは割愛するよ」

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