2004年06月22日
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文脈病―ラカン・ベイトソン・マトゥラーナ 斎藤環 青土社 (感想その5「インターネット上の論客が致命的に物足りない理由」)

Written By: 川俣 晶連絡先

 本書をやっと読み終わりました。

 最後の方はとても歯ごたえがありすぎて、文書を追うだけで精一杯。疲れ果ててしまいますが、それでも意味が分かったなどとは到底言えない状況です。

 しかし、示唆されること、刺激を受けることが多く、いずれもう一度読み返したいと思います。読み返して征服する価値がある希有な本に出会った気がします。

 とりあえず、読み終わった時点での感想が2つありますが、テーマが違うので分けて書きたいと思います。

 まずは1つめ。

 ベイトソンの学習理論という話が、インターネット上の論客が致命的に物足りない理由を説明する理由になっているのではないかと、(まったく正しい保証は何もないにもかかわらず)、思ったことです。

 ただし、私自身が正しく本書を読めていると考えるのは全く無理のある仮定なので、以下の文章は無根拠の感想文に過ぎないことをお断りしておきます。ここに書かれたことを信じてはいけません。

ベイトソンの学習理論とは何か §

 ベイトソンの学習理論とは、学習を段階分けするものです。

 p306の表を、いい加減に大幅に要約して引用します。

名前内容コンテキスト
ゼロ学習ある刺激に対する反応が一つに定まり固定された状態コンテキストはない
学習I刺激に対する反応が一つに定まる、その定まり方の変化 (単純な学習が行われる)1つのコンテキストが繰り返し現れる
学習II学習Iのコンテキストについての学習。学習Iの速度が速くなるコンテキストの変化を学習する
学習III学習IIのコンテキストについての学習。学習IIの速度が速くなり、学習Iの速度が加速度的に速くなる学習IIのコンテキストの変化を学習する
学習IV学習IIIに発生する変化 (地球上のいかなる成体の生物もこのレベルには達しないだろう)?

なぜインターネット上の論客は物足りないのか §

 さて、ここでとりあえず注目すべき点は、学習Iと学習IIです。

 過去に、インターネット知の欠陥というアイデアに関するメモ Version2というメモの中で、以下のように書いています。

 検索エンジンや掲示板などの機能を活用して情報を収集する論客は、基本的に情報量を増やすこと(情報量増加戦略)によって論戦に勝とうとする戦略を取っていると考えられる。

(中略)

 もし、コンテキストと情報量は相容れない互いに反するものだとすると、情報量増加戦略は、コンテキストの存在感を希薄化する。情報量が限界まで増加した論客の思考からは、相反する性質を持つコンテキストという概念は弾き出され、そのようなものが存在するという実在感すらも意識されなくなる。

 (補足: 情報量増加戦略を取る者は、コンテキストを持たないのではなく、暗黙的な自分のコンテキストを1つだけ持っていると考えられる。コンテキストという概念を意識し、使いこなす者達は、複数のコンテキストを切り替えながら使用したり、新しいコンテキストを獲得する能力を持っていると考えられる)

 ここで問題になるのは、情報量とコンテキストが相反するものだとして、どうして情報量だけではダメで、コンテキストが必要とされるのかという点です。

 もっと、ぶっちゃけた言い方をすれば、情報量だけが多い論客の書いたものは、なぜ自分にとって酷く退屈に感じられるのかという疑問です。

 更に言い直せば、コンテキストには情報量を上回る価値があるのはなぜか、という問いになります。

 この問いは、学習Iと学習IIという概念を持ち込むことで、すっきりと説明可能になります。

 情報量を増大させるという行為は、基本的に学習Iに対応する行為だと考えられます。

 そして、コンテキストについての学習は、学習IIによって行われます。

 学習Iの段階と学習IIの段階は、それぞれメタレベルの関係にあると考えられます。つまり、学習IIとは、メタ学習Iとなります。

 そのため、(学習IIの段階でものを考えている)コンテキストを意識する者から見て、(コンテキストを意識せず)情報量増加戦略を取る論客はメタ階層が1つ下の存在にあたるわけです。メタ階層が1つ違うと言うことは、あまりにも落差が大きすぎて、そもそも議論になり得ないということになります。

 仮に両者が議論を行うと仮定した場合、両者の条件が同じであれば、前者の圧勝で終わるでしょう。初期状態では後者の方が情報量を多く持っているかもしれませんが、前者は学習のコンテキストを学習することができるため、学習速度が速く、知識総量は前者が瞬く間に追い抜いてしまうことになります。

 本書では、学習Iと学習IIの違いと速度と加速度という言葉で説明しています。つまり、学習Iとは等速運動であり、学習IIとは等加速度運動に対比されます。

学習IIIまでは人間になしえる世界 §

 ベイトソンの学習理論によれば、学習VIは人間が到達できない水準とされているようですが、学習IIIまでは人間が行ける世界です。そして、学習Iはパブロフの犬と同じ水準と位置づけられています。そう考えると、学習Iの水準にいつまでも止まることは、人間としてつまらないのだろうか、と思って見たり思わなかったり。いずれにせよ、以上の文章は正しい理解に基づくものではなく、無意味な駄文です。

2004年6月22日0時30分頃追記「コンテキスト性を獲得する方法」 §

 一応、これだけは書いておかないと不親切かな、と思ったので書き足します。

 もし、自分にコンテキスト性が希薄だと気付き、コンテキスト性を回復したいと思った場合どうすれば良いのか。

 とりあえず、インターネットに依存した「知」から離れる必要があります。そして、本を読む必要があるでしょう。この選択は、電子が悪であり、紙が善であるというような単純な話ではありません。現在のインターネット上にある情報はコンテキスト性が希薄であるという情報の構造の問題に起因するものです。当然、インターネット上であっても、強くコンテキスト性を持ったコンテンツ発行システムがあれば、インターネットでもOK!と言いうるものです。しかし、これを書いているこの瞬間に、そのような性質を持ったシステムは非常に少なく、それに頼ることはできないと思います。

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