2005年03月07日
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赤松健とクリエイション論 第7回 「ずば抜けた成功者の条件とは」

Written By: 遠野秋彦連絡先

2つがクロスする領域 §

 狭義のクリエイターであることと、通俗性を肯定すること。

 この2つの特徴を意識的かつ明瞭に共有する者は多くはない。

 なぜなら、これは自己の才能、自惚れ、プライドの否定につながるからである。

 狭義のクリエイターになるということは、全てを自分の頭から取り出せないとはっきり認めることである。これは、自分に才能がない、という誤解に容易に結びつき、なかなか認めることができないことである。(正確に言えば、狭義のクリエイターの才能とは、自分の頭の中に存在しないものが何かを正しく知っていることであろう)

 そして、通俗性の肯定とは、高尚な芸術に背を向けることであり、自分自身の社会的な評価を低めることになる。

 そのことについて、赤松健はインタビューで述べている。

いや、私なんかは同業者からは、「芸術家じゃない」みたいないわれ方をしてて、相当尊敬されていないですよ。商業主義だから。ハリウッド的なところとかね。たぶん小室哲哉やつんく♂も同業者から尊敬されていないかも、と思うんですけど、私にもそういう側面があります。しかし、私はそれでいいかなと考えているんですよ。人から尊敬されるためにやっているわけじゃない。読んだ人によろこんでもらおうと思ってやっているわけですから。たぶんモーニング娘。が落ち目になっちゃったら、つんく♂はすごく悩むでしょう。しかし普通のミュージシャンならば、好きな曲を書いて、好きなように歌うことができて、それで少しでも人にいいと感じてもらえれば満足だと思うんです。しかし私はそうではない。薄っぺらい商業主義だと自分でも思いますけど(笑)。

 ここで注目すべき点は、芸術家ではないと言われても、それで良いと自らを肯定してしまう態度である。実は、このように肯定できることは、一種の特異な才能ではないかと思う。たいていの場合、芸術家として認知されるという誘惑には勝てない。

 ちなみに、既に述べた通り、芸術家=アーティストと、狭義のクリエイターは一致しない概念である。従って、赤松健がアーティストではないと規定することと、狭義のクリエイターであると規定することは両立しうる。

ずば抜けた成功者の条件とは §

 ここで、ここまでに述べたことをまとめてみよう。

 赤松健と宮崎駿は、いずれも、ずば抜けた商業的な成功を収めた成功者である。

 この二人に共通する特徴を抽出すると、以下の2つが見えてくる。

 1つは、アーティストとは異なる狭義のクリエイターであること。

 もう1つは、通俗性の肯定である。

 この2つの条件の両立は、社会の多数派となる一般大衆に対する強いアピール力を持つと共に、アピールし続ける継続性を持ちうる。その点で、他のタイプの者達、アーティストや、狭義のクリエイターに収まらないクリエイターなどとは決定的に異なっている。

 実は、この「継続性」こそが、重要なポイントではないか。

 継続性を持つということは、経験、知名度、人脈などが蓄積されていくことを意味する。この蓄積が一定の水準を超えると、もはやいかなる才能、天才であろうとも、容易にひっくり返せないだけの圧倒的な力を発揮可能になる。

 つまり、他者を圧倒する宮崎アニメの存在感とは、宮崎駿の才能によって達成されたものというよりは、宮崎駿の継続性により達成されたものだと言える。継続性を持たざる才能は、いかに天才であろうと、容易に継続性を持つ狭義のクリエイターに打ち勝つことはできない。あるいは、運の助力無くしては勝てない、と言っても良いのではないだろうか。

目次 §

 注: 赤松健とクリエイション論には問題提起から結論に至る文脈、コンテキストがあります。つまり、それまでに行われた説明について読者は分かっているという前提で文章が組み立てられています。そのため、第1回から順を追って読まない場合、内容が理解できないか、場合によっては誤解を招く可能性があります。

表紙

赤松健とクリエイション論 第1回 「問題提起・なぜ舞-HiMEはネギま!を恐れるのか」

赤松健とクリエイション論 第2回 「第3の登場人物『宮崎駿』」

赤松健とクリエイション論 第3回 「重要な手がかりとなる赤松健インタビュー」

赤松健とクリエイション論 第4回 「組み合わせの創作法」

赤松健とクリエイション論 第5回 「新しいことにチャレンジする」

赤松健とクリエイション論 第6回 「つらいことが起こらないドラマ」

赤松健とクリエイション論 第7回 「ずば抜けた成功者の条件とは」

赤松健とクリエイション論 第8回 「『舞-HiME』は成功者の条件を満たすか?」

赤松健とクリエイション論 最終回 「将来について」

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