2006年09月06日
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「無時間性という病理」の始まりと終わりに関するメモ

Written By: 川俣 晶連絡先

 単なるアイデアのメモなので無意味監獄へ。

 ちなみに、内容は間違っていると思って読む方が賢いでしょう。

「無時間性という病理」とは何か? §

 物事には、過去の出来事によって現在の出来事が左右される「因果関係」が存在します。(コンテキスト=文脈と呼んでも良い)

 しかし、「因果関係」の存在感が極めて希薄になり、あるべき正しい状況は常に正しく、それは達成可能であるという感性があり得ます。

 このような感性は、過去、現在、未来の区別が存在しないという意味で「無時間的」であると言えます。しかし、このような感性は、厳然と存在する「因果関係」の存在と両立しないため、健全な社会生活を送るために依存しうる感性とは呼べません。そこで、ここではこのような感性を「無時間性という病理」と呼ぶことにします。(「コンテキスト性の希薄化」と呼んでも良い)

「無時間性という病理」の事例 §

 たとえば、「Windowsは使いもしない無駄な機能が多く重すぎる。軽いLinuxを使うのが正しい」という主張は、典型的な「無時間性という病理」と言えます。なぜなら、LinuxのようなUNIX互換OSを実用的に実行できるレベルまでパソコンの性能が上がったのは、「使いもしない無駄な機能」によってハードの性能向上が促進されたからです。つまり、「使いもしない無駄な機能が多い」という状況を否定するということは、Linuxの存在する基盤を否定することそのものになります。

 たとえば、「萌えという言葉の語源」について諸説が永遠に対立し続けるような状況は、典型的な「無時間性という病理」と言えます。なぜなら、明確な用例が見出された時期より後で「萌えが生まれた」という主張が、無批判的に繰り返され、それに対する批判も的確に行われているとは言い難いからです。

IT業界とオタク界 §

 上に出した2つの事例はIT業界とオタク界に関するものですが、これが偶然ではありません。この2つが共通する病理にむしばまれているというアイデアによってこの文章が書かれているからです。

 拙著「実践Web2.0論」に書かれた1997年体制とは、IT業界における「無時間性という病理」と見ることもできます。

急速な拡大に伴う歪み §

 1997年前後の数年間に、IT業界とオタク界の双方に共通して到来したのは、急速な規模の膨張です。つまり、多数の人々がその世界に流れ込んだわけです。

 このような膨張サイクルにおいて、必然的に「先住民」対「開拓者」の対立が発生します。

 ここで「開拓者」が遭遇するのは、既得権益と圧倒的な情報量の差によって「先住民」に勝つことができない絶望的な状況です。

 それを打開するために「開拓者」が取りうる選択は2つあり得ます。

 1つは、正攻法で「先住民」に戦いを挑み、勝つまで続けるという選択です。当然、勝つまではずっと負け続けることを意味します。

 もう1つは、負けたくないので、戦わずに「先住民」に対して優越の立場を主張する論理を模索する選択です。

無時間性が必須要求されるメカニズム §

 正攻法で戦わないとすれば、「開拓者」は自分たちの「論理」を持たねばなりません。

 その「論理」がどのようなものかは、ここでは深入りしません。

 ただ、1つだけその「論理」が持たざるを得ない必然的な構造があります。

 それは無時間性です。

 「先住民」に対する優越を主張するということは、逆に言えば「先住民」の優越性を否定することを意味します。「先住民」の優越性の根拠は、「先行した活動」つまり過去にあります。一般論として言えば、過去は変えられません。それにも関わらず、それを否定しようと思うなら、必然的に「過去・現在・未来」の違いが無意味化された「無時間性」という特徴を持たざるを得ません。

「無時間性という病理」の弊害 §

 書くだけバカバカしいので、省略。

 ちなみに、明らかに突っ込みどころ満載のバカバカしい主張に過ぎないもの(たとえばオープンソース等)が、あたかも社会正義であるかのようにまかり通る不思議は、「無時間性という病理」が認識を人間の認識をねじ曲げていると解釈すると、割と筋の通る解釈ができるかも?

 ちなみに、頭の良い人が「そんなバカな」というトンデモを信じ込むケースは歴史上珍しくありません。念のため。それを論じる手段は、おそらく「論理」ではなく「病理」でしょう。

「無時間性という病理」の克服の兆し §

 この夏(2006年)、インターネットで話題になった映画「時をかける少女」(細田守監督)は、多数のオタクによって強く支持され、多数のリピーターも生みました。

 このような映画がオタクに支持されるという状況は、「無時間性という病理」の克服の兆しと見ることができるかもしれません。

 ちなみに、この映画は2つの意味で「無時間性の呪縛」からの解放を指向します。

 1つは、時間旅行(タイムリープ)という題材そのものが、強く時間を意識させる題材であること。

 もう1つは、タイムリープによって行われた過去の改変が、「因果関係」によって意図せざる現在の変化を引きおこすという明瞭な描写を見る者に突きつけること。

 ITの世界でも、「無時間性という病理」から脱却する動きはあって、全般的に今は「病理からの回復サイクル」と見ることができるかもしれません。

「無時間性という病理」が終わる必然性 §

 「無時間性という病理」とは、そもそも「勝てない相手を無力化する」という戦略から副次的に派生したものであって、そのような病理を抱えた者達は、実は「論理で説得する」者達に過ぎず、「実際に成果を出す」者達ではありません。

 従って、「成果を出す」段階に進んだ時点で、「無時間性という病理」を抱えた者達はリタイヤせざるを得ません。

 一方で、かつて「開拓者」であった者達は、「先住民」の無力化に成功したため、あたかも、彼らが昔からその世界に居座っていたかのような「先住民」の立場に座ることになります。当然、後からこれらの世界に参入する者達は存在し、彼らとの間で「先住民」対「開拓者」の対立が発生します。

 しかし、この対立は深刻化しません。なぜなら、この対立においては2つの特殊性が存在するからです。

 第1の特殊性は、「開拓者」の方がより大きな「実力」を有することになり、「先住民」は容易に駆逐されうることです。

 第2の特殊性は、無時間的な感性では上手く行かないと悟った「先住民」が「開拓者」側に立場を変える現象が見られることです。

 つまり、本来弱い側の方が強く、そして勝つ方に容易に移動できることにより、対立は深刻化しません。

補足 §

 繰り返しますが、単なるアイデアのメモなので、内容は間違っていると思って読む方が賢いでしょう。

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