2006年10月07日
トーノZEROアニメ感想機動戦士ガンダムtotal 4591 count

君は魂が震えるガンダム漫画を何回読んだことがあるかっっっ!? 復活したガンダムマガジンの超挑発!!

Written By: トーノ・ゼロ連絡先

 コミックボンボン2006年11月号増刊ガンダムマガジン。

 ガンダムA(エース)ではないこのガンダム雑誌の出現は、おそらく今時の情けないガンダム漫画の現状に、ガンダム漫画の元祖が一喝するという意味合いを持っているのでしょう。

 ガンダム漫画の何が情けないのか。

 なぜ、コミックボンボン増刊が元祖として一喝できるのか。

 そのあたりの説明を、ここで書いてみたいと思います。

前置き §

 ここでいう「魂が震える」というのは、全く個人的な体験を意味します。誰が読んでも同じような印象を受けるわけではありません。その点は留意してお読み下さい。ただし、私にとって「魂が震える」とはどいうことかは、このあと明確に記していきます。

 さて、私自身は、全てのガンダム漫画を読んでいる訳ではありません。

 おそらく世の中に存在するガンダム漫画の1割も読んでいないでしょう。

 ここで述べられる話は、その範囲内で語られるものに限られます。

 それにも関わらず、なぜそのような話を書くのかと言えば、「魂の震えるガンダム漫画」と「そうではないガンダム漫画」の違いを述べるだけなら十分な読書量があると考えるためです。つまり、ここで述べるのは、ガンダム漫画を2つの類型に分類する基準であって、ガンダム漫画の全体像ではないわけです。

コミックボンボン2006年11月号増刊ガンダムマガジンとは何か? §

 低年齢層向きの漫画雑誌としてメジャーなものに、コミックボンボン(講談社)と、コロコロコミック(小学館)があります。このコミックボンボンの増刊として2006年の10月に発行された雑誌です。コミックボンボンは、SDガンダムなどの子供向けにアレンジされたガンダム文化の発信源とも言うべき位置づけで、ガンダムとの縁が深い媒体です。

 これに対して、現在メジャーなガンダム雑誌であるガンダムA(エース)は、角川書店から発行されているもので、全く別の雑誌です。

 さて、私はよく知りませんでしたが、ガンダムマガジンと題した雑誌は1990年から1991年にかけて6冊発行されたことがあるようです。この6冊との関連性はあまり明確に示されていませんが、関連があることは間違いないでしょう。

君は魂が震えるガンダム漫画を何回読んだことがあるかっっっ!? §

 それに対する私の答は3回です。そして、ガンダムマガジンを読んでそれが4回に増えました。

 では、その3回とは何か。

講談社コミックスボンボン「機動戦士ガンダムMS戦記 富野由悠紀/近藤和久」 §

 1985年に出た、紛れもなくお子様御用達の「ボンボン」ブランドのコミックスです。

 偶然見つけて購入しましたが、一読してまさに魂が震えましたね。

 一人のジオンの少年がMSパイロットになり、連邦と戦うという子供の目線で描かれた作品であり、紛れもなく子供向け作品です。それにも関わらず、ストーリーもビジュアルも一切妥協がなく、大人が読んでも面白いものです。

 いや、面白いどころではないでしょう。当時、ガンダムを知る良い大人に読ませると夢中になって読みふけるという状況を何回も目撃しました。

 これは、その後で大人のマニア向けの体裁で再発行されています。おそらく、この作品を知っている大多数の人たちは、こちらの方を見ているのだろうと思います。

 しかし、私は紛れもなく「ボンボン」ブランドのコミックスで読みました。その衝撃度は絶大です。

 そして、こういう作品を世に送り出した「ボンボン」ブランドならば、今時のガンダム漫画に対して元祖として一喝する権利もあるのでしょう。

魔法の少尉ブラスターマリ §

 ジオンの少女が魔法を使って変身して連邦を倒すという荒唐無稽な作品です。

 それにも関わらず、この作品が圧倒的に優れているのは、戦時下の日常生活というものを描ききっている点にあります。連邦との戦争で敗北に貧しているジオンの一般国民が、それでも元気いっぱいに当たり前の日常生活を送っているのです。それは正義であるとか、敵を倒すであるとか、そういう戦争の華やかな部分の裏側に確実にあるものです。

 主人公の少女は、干してある洗濯物を台無しにしたという理由で、サイド3に進入してきた連邦のMSを叩きます。それは、戦争漫画で置き去りにされがちな生活のリアリティの逆襲そのものです。

機動戦士Zガンダム デイアフタートゥモロー カイ・シデンのレポートより (1) §

 機動戦士Zガンダムの時代に、カイ・シデンが何をしていたのかを追う作品です。

 ジャーナリストになったカイは、MSではなく生身の人間の視線で、宇宙世紀の世界を生きる様々な人々を見ます。ほとんど戦闘シーンはありません。香港に向かうサイコガンダムは、ただ上空を通過するのを見守るだけです。しかし、一般の人間の立場からすれば、そうそう戦闘を目撃することなどあるはずがありませ。本当に目の前で戦闘が起きたら、見るより先に逃げるはずだからです。とすれば、実際にあり得るのは、禍々しい戦闘兵器が上空を通過するのを見守ることぐらいでしょう。

 そういう意味で、この作品は「僕ら」の視点から宇宙世紀の世界を描いた作品そのものであり、それはとても希有なのです。

そして4回目 §

 今回のガンダムマガジンで魂が震えた作品は主に2つです。

 嘘みたいでしょう? ガンダムが生まれてから数十年のあいだに3つしかなかったのに、いきなり2つも追加されたのですから。

MSV戦記ジョニー・ライデン §

 有名なジオンのエースの一人、ジョニー・ライデンの物語です。

 何となく、ジオンの理想を体現するために若さを武器に戦い続けた好青年……という印象を持っていましたが、この作品はそのようなジョニー・ライデン像を決定的にぶち壊します。

 そもそも彼はザビ家が嫌いであり、戦争にも参加したくなかった人です。それを家族によって無理矢理MSパイロットにさせられてしまっただけです。だから、怪我をして除隊することを目指して、無謀な突撃を行うものの、それが戦果を拡大し、彼をエースとして祭り上げる結果になってしまうという皮肉。

 しかし、彼は最後の最後に自分の意志で戦いに出向きます。それは、好きな女の子がオペレータとして軍に志願していたことを知り、そこに連邦の攻撃が迫っていたときです。

 これはもう魂が震えましたね。

 まず、ジオンの著名なエースでありながら、全くジオンの理想を信じてもいなければ、戦争で貢献したいと思っていないところが素晴らしい!

 人の心の弱さと誠実さはここにあります。

 ジオンの理想のために死のう……などという人物よりも、よほど誠実です。

 それにも関わらず、好きな女の子のためなら身体を張って戦うことができる……というのも素晴らしい。これは本当の意味で筋の通った行動です。

 まさに、彼は僕らと同じ地平を生きる弱い人間であり、同時にあるべき生き方を貫徹したヒーローと言えます。

 そういう人物の生き様を読むことができたというのは素晴らしい体験です。

眼下の宇宙(そら) §

 オデッサ作戦の直前、ジャブローから欧州へMSを輸送する船団の話です。

 ジオンの水陸両用MSに襲撃され、必死の戦いでそれを防ぎます。ジオンのMSは撃沈できたものの、輸送船は沈められて、輸送そのものは失敗します。

 この作品で特筆すべきことは、単に「敵を倒す」という単純なドラマではないことです。連邦軍としては、輸送を成功させることが勝利条件となります。たとえ、連邦軍の護衛戦力がすり潰されようとも、輸送船さえ目的地に到着すれば勝ちです。

 それゆえに、輸送船団を襲撃したジオンのMSは全滅し、主人公の連邦のMSパイロットは生還できたにも関わらず、この戦いは連邦の負けです。

 つまり、これだけ必死になって戦い、奇跡のような大逆転すら引き起こしたにも関わらず、主人公達は負けたのです。

 負けるドラマをこれほど緻密かつ誠実に描くことができるというのは、本当に素晴らしいことですね。

 僕らの人生は負けることも珍しくない……という意味で、僕らの視線から見て説得力のある物語がここにあります。

 いや~、本当に魂が震えますね。

ここでいう「魂が震える」とは何か? §

 この世界に絶対的な正義や絶対的な勝利などあるはずもありません。

 オレ=主人公は常に正義であり絶対に勝つ……、などということはありません。

 そう、それは「無い」のです。

 だからこそ、「無い」ということを肯定した上で、あえて生きる意志や希望を語りうる作品こそが、「魂が震える」わけです。

 とすれば、「魂が震ええない」作品の条件は明らかです。

 絶対的な正義や絶対的な勝利を描いた作品は、魂が震えるわけがないのです。

 しかし、まさにその「魂が震えない」作品は多数存在し、ありふれた存在だと言えます。

 なぜそのような作品が多いのか。

 その決定的な理由は、子供時代に抱く「オレ=主人公は常に正義であり絶対に勝つ」という錯覚に求めても良いような気がします。つまり、オレ=主人公が常に勝つ話は、大人が見ると「嘘くせえ」と思うかもしれませんが、子供であれば何の疑問もなく受け入れられるのです。

 しかし、それは子供向け作品は常に魂が震えない……という意味ではありません。

 子供向け作品であっても、オレ=主人公が敗北する作品はあるし、それは子供にとって心を成長させる糧となるのです。

ガンダムAとガンダムマガジンの差とは §

 最近もうガンダムAは読んでいない(お笑い特集号は読んだ)ので、あまり確実なことは言えませんが……。

 たぶん、ガンダムAと今回のガンダムマガジンの差とは「魂が震えるか否か」です。

 それは、ガンダムが主役か否か……という角度から見ても分かると思います。ガンダムは勝利をもたらすMSであるために、ガンダムが主役になる場合、高い確率でオレ=主人公は勝つからです。

 ガンダムAの作品は、やはり(どのガンダムかは別として)ガンダムが主役の作品が多いような印象があります。それに対して、今回のガンダムマガジンでは、ガンダムが主役ではない作品の比率が異様なまでに高いのです。ジオン側の立場で描くか、あるいは連邦側で描くとしても「眼下の宇宙」の主役メカは量産型のジムです。RX-78誕生秘話はガンダムを主テーマにした作品でありながら、主役はジオンのパイロットであり、最後に彼は自決してしまいます。

 とすると、実は面白い逆転現象が起こるのです。

 ガンダムAとコミックボンボンを比較すれば、明らかに前者が高い年齢層、後者が低い年齢層をターゲットにしていると見えます。

 それにも関わらず、高い年齢層をターゲットにしているはずのガンダムAの方が、ガンダムを主役にし、子供時代に抱く「オレ=主人公は常に正義であり絶対に勝つ」という錯覚無しには楽しめない作品の比率が高いことになってしまうのです。

 逆に、そこそこの年齢に達したマニアからは「どうせ子供向けだろう」と無視されるケースが多いボンボン系作品であるにも関わらず、その方が実は大人にも納得しうる作品をより多く提示しているのではないか……という可能性が出てくるわけです。

 こういう矛盾した逆転現象があるとすれば、まさにこれは私好みですね。こうして、素晴らしい作品を見いだせたのは、マニアが揃って無視した「ボンボン」ブランドから「MS戦記」という傑作を(偶然に頼りつつ)自力で発掘した過去の出来事の再現に他なりません。

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