「カイメモつまり『機動戦士ガンダム デイアフタートゥモロー ―カイ・シデンのメモリーより―』の本当に凄いところは、戦争の火種は人為的に造られるという視点があることと、火種を消す行動が主人公の最終的な行動として肯定されることなのだが、それはそれとして別の意味でカイメモの凄いところ」
「なにそれ?」
「こういうところだよ」
- 通史という言葉を使っている
- 一般的に通史を扱う常設展と、部分的な範囲を扱う特設展の違いが分かっている
- 地域ごとに歴史展示の見せる内容が違うことが分かっている
- 戦争のイメージが後付けされるという視点がある (当時のリアルタイムの間隔は違う)
- 分かりやすくするためにある種の要素を抜いてしまう、という視点がある
- 研究家の成果に、リアルタイムを知る者がダメ出しできる、という視点がある
- 頭を使って考えることが、報酬として存在する
「なんだよ」
「とりあえず、東京23区の全ての区の歴史資料館をまわってごらん。それだけで、同じ歴史の扱いがかなり違うことが分かる。東京に住んでいなければ、他の地方でもいいよ。著者は、そういうことを非常に良く分かっているのだろう。歴史マニア、というよりも、アマチュア研究家の領域に片足が入っているのではないかな」
「そこまで予測するのかい?」
「少なくとも、この種の歴史イベントや資料館に何回も足を運んでいるよ。そういうリアリティがコマにありありと浮き出ている」
「そこがカイメモの凄み?」
「そうだな。自分はそう思った」
「でも理解されているとは思えないよ」
「ああそうだ。ガンダムオタクと歴史趣味は本来別のものだからな。重なっていることはかなり珍しいだろう」
「君は重なっているのかい?」
「いいや。歴史側の人間だ」