2004年11月20日
トーノZEROアニメ感想ハウルの動く城total 3357 count

宮崎駿監督でなければきっと公開できないような議論を呼びそうな傑作? 怪作?

Written By: トーノ・ゼロ連絡先

 ハウルの動く城、見てきました。

 第1印象の感想を書きます。

「これだ!」と思った序盤のドラマ §

 序盤で、ソフィーが初めてそれと知らずにハウルに出会うシーンが素晴らしいですね。そして、このシーンが、この映画で描くことを事前に言い切っている感じもあります。

 軍人にナンパされるソフィー。それを助けに入るハウル。しかし、ハウルも怪物から追われる立場で二人は逃げることに。そして、魔法で空中を歩く二人。なんという爽快かつロマンチックな情景であることか。それは、見ず知らずの美男子に助けられるソフィーの側から見てもロマンチックで素敵であるだけでなく、実はソフィーを助ける側の男の立場から見ても、男ならぜひとも発揮したい(かもしれない)女性への優しさを見事に体現した行動でもあるからです。

 こんなにも理想的な男の優しさが発露されているのをみて、もうそれだけで涙が出ました。

予想外の「城」の扱い §

 作品のタイトルはハウルの動く「城」です。「ハウルの」も「動く」も「城」を修飾する語句であって、「城」こそが主役と思うのは当然の成り行きでしょう。しかし、あの禍々しい城に備わっている大砲らしきものが火を噴き、破壊と殺戮をもたらす……という印象は全く裏切られてしまいました。

 とはいえ、「城」に出番がないとか、存在感がないということはありません。クライマックスでは、どんどん形を変え、最後には床板1枚と足2本だけになって快走します。

 予想を裏切られて面白かったと思います。

ハウルの声がキムタクで良いのか? §

 これは最も危惧されるところですが、実に良かったと思います。

 「ああSMAPのキムタクが声優やってるよ」というような印象は全く無く、完全にハウルというキャラクターを演じきっていて、しかも役にはまっていたと思います。

 有名人起用であるにもかかわらず、それにつきまとう不自然さが全く無いのが凄いことだと思います。

ソフィーの声が倍賞千恵子で良いのか? §

 これも危惧されたキャスティングではありましたが、全く意外にも良かったと思いました。もちろん、若い声ではありません。しかし、声などもともと個人差が大きく出るものであって、若者がみな若い声であるとも言えません。むしろ、作らずに若者の気持ちで自然に語れることが、ソフィーというキャラクターを自然な存在として浮かび上がらせたと言えるかもしれません。

90歳のヒロインは成立するか? §

 これもまた危惧されたことではありますが、ほとんどのシーンを老婆の姿で過ごすことは、逆に数少ない若いソフィーの姿を強調するという演出効果を発揮し、非常に印象的なヒロインという印象を残す事に成功していると思います。

実は感情移入できる老婆化 §

 主人公がいきなり18歳から老婆に変わることで、物語は元気よく転がって行かなくなります。物語は、もたもた、のろのろと動き始めます。

 そのペースで喜ぶのは老人だけであって、中年かそれ以下の年齢の者達には合わないのではないか、という印象も受けました。しかし、途中でそうではないということに気付きました。身体の自由が利かなくなることに嘆くソフィーに、実は私も感情移入ができたのです。人間、年齢を重ねていけば、誰でも身体の自由が徐々に利かなくなります。おおむね、30歳を過ぎれば、誰でもそういう面が出てくるでしょう。そのような思いも寄らない身体の不自由さが誇張されたものが老婆になったソフィーであるとすれば、それはかなり幅広い年齢層に感情移入可能と言えます。

戦う宮崎ヒロイン §

 空襲の場面で、ハウルも不在である状況で本人も気付かないうちに若い姿に変わって、ピンチと戦うソフィー。その姿は、まさにナウシカを代表とする戦う宮崎ヒロインの姿そのものです。

 90歳のヒロインと宣伝された映画で、まさか「戦う宮崎ヒロイン」を堪能できるというのは、あまりに予想外で驚かされました。

負けて戻ってくる軍艦 §

 戦争の描写もなかなか凄いと思います。

 実は最前線の戦場はほとんど出てきません。

 最初は勇ましい軍隊がいる街。いかにも軽薄で盛り上がっています。

 しかし、その次に出てくるのは燃えながら港に戻ってくる軍艦です。やっと港に戻ったというのに、乗員は次々と海に飛び込んで逃げ出しています。実に悲惨です。しかも、そこに空襲の追い打ちまで来ます。最前線で勇ましく撃ち合うのとは違う生々しい戦争描写が凄いですね。

劇場パンフレット §

 劇場パンフレットには、びっくりする人達が寄稿しています。

 私が驚いたのは、まず佐藤さとるさん!

 「誰も知らない小さな国」は子供の頃から非常に好きな小説でした。

 そういう人が寄稿しているということは、児童文学にこだわりを持つ宮崎駿監督も彼を評価しているということであり、少しだけ嬉しいと感じます。

 更に養老孟司さんが寄稿しています。あのベストセラーの「バカの壁」を書いた人ですね。多くの「自分は賢い」と思い込んだ馬鹿者が、この本を馬鹿にすることによって実は何も分かっていないことを露呈させた一種の名著です。そのような人が寄稿しているといのは、実に興味深いことです。

 更に緒方貞子さん。国連難民高等弁務官をやっていた方です。そんな方が、劇場パンフレットに寄稿するような映画というのは、やはり凄いことだと思いますね。しかも、この方は、適当にお茶を濁さず、きちんと映画を見てそれを解釈しようとしています。それだけの手間を掛けさせる価値があった映画ということなのでしょうか。

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