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2009年05月04日
川俣晶の縁側歴史と文化下高井戸周辺史雑記total 8257 count

「かなしい坂」伝説が示す玉川上水の初期計画経路は物理的にあり得ない!?

Written By: 川俣 晶連絡先

 かなしい坂の問題の続きです。

 私が持っていた疑問は以下の2点です。

  • かなしい坂伝説で頓挫が示される玉川上水の初期計画経路は、いったいどこに向かう水路を造る気であったのか (標高データ的にさっぱり分からない。少なくとも、実際に建設された玉川上水の標高よりも低いので、途中から同じ経路を取ることは無理)
  • 「むだ掘り」「空堀」「新堀」とは具体的にどこか (それが分からないと考えようもない)

 かなしい坂の現地を見ても、疑問は解消されませんでした。

分かったこと §

 これについて、「府中市郷土の森紀要 第12号 1999. 3」に掲載された「府中用水に関する地理的研究(3)多摩川低地の地形と府中用水 高橋睦人」が大変に参考になりました。この記事の後半は、まさに「かなしい坂」の伝説にまつわる玉川上水の計画経路についての検討に費やされています。

 これによって、以下の点がクリアになりました。

  • ムダ堀の具体的な推定位置が地図上で示されて分かった
  • しかし、具体的に想定された経路は存在せず、このような経路での玉川上水の建設そのものが存在しなかったという論者も多い (この著者も思田政行氏もその意見を示しているという)

納得に達していない点 §

 しかし、これで納得したのかといえば、そうでもありません。

 詳しい話は紀要を見ていただくとして、私が気になった点が2つあります。

 1つは、下流部の玉川上水の想定経路が現在と同じという暗黙の前提を取っているように思えることです。個人的にいろいろ考えてみましたが、標高データ的に考えると、稜線上にある経路に水を上げることはどこからどう見ても不可能であり、それを最初から意図していたとは到底考えられません。あり得るとすれば、谷地の底を流れる神田上水に接続して、その水量を増やす形を取る形か……などと考えていますが、具体的な根拠も結論もありません。あるのは疑問だけです。(その場合、終点は四谷大木戸にはならない)

 2つめは、以下のように結論を書いている点です。

つまり、ムダ堀を介して多摩川の水を四谷大木戸に引くことは無理である。その後数年を経ずして、玉川上水や野火止用水の測量と開削を成し遂げるほどの高度の技術を持った江戸幕府が、このような初歩的な誤りを犯して、無駄な資金を投じたとはとても考えられない。

 まず、技術的な意味でいえば、玉川上水は江戸幕府が作ったものではありません。幕府は基本的に金を出しただけです。金を受け取って実際に玉川上水を作ったのは(通説に従うなら)玉川兄弟です。だから「高度の技術を持った江戸幕府」という主張はそのまま受け入れて良いかためらわれます。もし、幕府を「金を出すだけの立場」と見なすなら、初歩的な誤りを含む計画に金を出すことはあり得ます。実際、プロが見れば絶対に実現しないと分かるような夢想的な計画に予算が出るような状況は珍しくもありません。(ITバブルの本質はまさにそういう点にあります)

 ということは、そのような工事は行われなかった、と断じる根拠としては十分とは言えないのではないか、と思うわけです。

余談・逆の解釈 §

 ここはあくまで余談です。

 私は、玉川上水開削の具体的な経緯は不詳だろう……と今のところ思っているので、玉川兄弟開削説と安松金右衛門開削説のどちらも支持しません。

 それはさておき、上記で「初歩的な誤りを犯すわけがない」と考えるのは、初期計画と実際に実現した計画の双方を玉川兄弟が手がけた場合に成立する考え方である、とも言えます。これだけ立派な上水を建設できたのだから、それ以前にこれほど無理のある計画を立てるわけがない、と考えられるからです。

 しかし、無理のある計画にも金は出る、と考えると話は逆転します。これだけ無理のある計画を始めてしまった玉川兄弟が玉川上水を作れるわけがないので、むしろ安松金右衛門開削説の方が説得力があるという解釈もあり得ます。「玉川上水や野火止用水の測量と開削を成し遂げるほどの高度の技術を持った」のは安松金右衛門側である、とも考えられるからです。

 私自身の現在の考えは、上記のような状況を踏まえて「分からない」です。安松金右衛門開削説を支持している訳ではありません。

事実と見なして良さそうなこと §

 とりあえず、ムダ堀という人工の堀が存在したことだけは事実と見なして良さそうです。何をどう解釈するにせよ、これを適切に解釈できない限り、問題クリアとは言えないのかも知れません、

余談・疑問 §

 かなしい坂問題を追及しているうちに浮かんだ疑問は、以下のようなものです。

  • 玉川兄弟の初期計画と実際に開削された玉川上水は、接点がどこにも存在しないぐらい別物だったのではないか
  • つまり、取水点を変えて同じゴールに向かう水路を造り直したのではなく、取水点からゴールまで含めて全くの別経路に計画変更されたのではないか

 極めて曖昧な書き方ですが、全ては単なる漠然とした疑問です。

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