2009年06月08日
川俣晶の縁側歴史と文化下高井戸周辺史雑記total 2946 count

かなしい坂を含む玉川上水初期計画案の合理性を検討する

Written By: 川俣 晶連絡先

 2009年6月7日に東京都水道局水道歴史館へ行った際、恩田政行氏の著書もちらりと見てきました。とりあえず見た範囲だけの感想から言えば、(確定的ではありません)恩田政行氏の意見には2つの問題があると感じました。

  • 理論的必然により正しい結果が導き出せるという信念を持ち、他人も同様に振る舞うという暗黙の仮定を置いているが、その点に対する検証がない
  • 自説に反するものは、揶揄したり馬鹿にするような表現が見られる

 とりあえず2番目は「下品」であるという理由で好きではありません。

 それはさておき、やはり自分でもう少し検討を加える必要があると思ったので、いくつかの仮定を置いた上で更に考えてみます。

仮定 §

  • 実際には建設不可能の非合理的な計画案だったかもしれない、という前提を踏まえる (明らかに技術的に実現できないものに実績ある大組織や人物が資金を投じることは珍しいことではない)
  • しかし、合理性ゼロの計画案では金は出ないだろうから、それなりの理があると仮定する (もちろん、その理は空理空論の理かもしれない)
  • 京王線多磨霊園駅近くのムダ堀が物証であると仮定する (それ自体は完全に検証されたことではなく、あくまで仮定である)
  • 江戸の上水として意図された開削であるという前提は承認する
  • 他の情報は全て参考扱いとする (文書の情報の確度は物証に劣る)

経路の必然性を考察する §

 頭を白紙に戻して再検討すると、以下のような考えが可能です。

  • 神田上水の水量は、限られた湧水が水源である以上、増やしようがない
  • 多摩川の水を江戸に引いたらどうだろうか
  • だが、長大な水路を開削するのは大変だし、下流域から引くと何本もの川との交差が発生してしまう
  • ならば比較的上流域から多摩川の水を神田上水に導いたらどうだろう
  • これなら、途中まで開削するだけで、残りは既存の神田上水の水路を使用できて合理的だ。神田上水経由の様々な上水の配送設備も活用できる

 これが正しいか否かは棚上げにして、これを前提に線を引いてみることにします。

仮定ラインを引いてみる §

 京王線多磨霊園駅(左下)から井の頭の池(右上)に直線を引いてみました。

京王線多磨霊園駅(左下)から井の頭の池(右上)に直線を引いてみました。カシミール3D+ウォッちず25000+日本高密メッシュ使用

 (カシミール3D+ウォッちず25000+日本高密メッシュ使用)

 このラインは以下の条件を満たして、「見た目だけは」合理的です。

  • (おそらく川のある)多くの谷の上流端よりも更に上流側を経由している
  • その条件を満たした上で、おそらくは最短の経路である

想定コンペ §

 上記の計画案と、実際に建設された羽村-四谷大木戸間の計画案があったと仮定しましょう。この場合、どちらが勝つでしょうか?

 この場合、上記の計画案の方が魅力的である理由がいくつもあります。(ただし、これらが本当に割安になる要因と見なせるかは別問題)

  • 総延長が1/4以下であり用地取得等の手間が大幅に少ないことが期待される
  • 既存設備の多くの転用できる
  • 長さが短いので、維持管理のコストも割安になる

 つまり、上記の計画案の方が勝ってもおかしくない状況はあり得たと考えられます。

 ちなみに、できるわけがない夢想的な計画案が、現実的な計画案を押しのけて通るのも珍しい話ではありません。(そういう場合は、計画そのものがなかったことにされるか、あるいは現場の涙ぐましい努力で実現可能な形に修正されて実行されるわけです。というか、現在流布されている俗説のストーリーはまさに「現場の涙ぐましい努力で実現可能な形に修正されて実行される」物語と見なせます)

この項のまとめ §

  • この計画案には、権限を持った素人を信じさせるには十分な水準の合理性や理が備わっていた可能性があり得る
  • 従って、このような計画が存在しなかった、とまで断言はできないかもしれない
  • いずれにしても、全ては仮定の上の話なので、けして信じてはいけない

感想 §

 実は最初にやったことは、上図の作成です。単に、標高データの地図上で、多磨霊園駅から井の頭の池に線を引いただけです。すると、一見して「フェイクの」合理的な状況が浮かび上がってびっくり。

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