「テレビ放送していた耳をすませばを最後まで見てしまったよ」
「なぜ?」
「凄かったからかな」
「どれぐらい凄い?」
「眠くて途中で部屋に戻って眠る気満々の母が、最後まで見たぐらい」
「ジブリ作品はみんな凄い?」
「違う。ジブリの諸作品の中でも突出している。これはもう作れないだろう」
「猫の恩返しは?」
「頑張ったら作れるかもしれない。でも、耳をすませばの凄みは異質」
「じゃあ結論は?」
「神さまありがとう。近藤喜文監督が亡くなる前にこの映画を残してくれて」
「具体的にどこが凄い?」
「いろいろあるのだが、分かりやすいところで行くと、イバラードの世界が埋めこまれていたり、宮崎駿の次男の版画が挿入されていたりするあたり、ああいう異種協業は難しい。あれほど上手く今はもうできまい」
「他に何か?」
「うん。西老人や雫の両親の心情は昔より良く分かる」
「今回の視聴を離れてこの映画に思ったことはなに?」
「雫や聖司は模範的な子供ではない。親や教師はこうならないことを願っている。それにも関わらず、それを模範的な子供あるべき姿と受け取り、自分はそれを実践できないことに不快感を抱いている子供達がいると知った時は、ビックリしたな」
「雫や聖司は模範ではなく反逆者だよね」
「そう。真似はすべきではない。というか、真似はできないと思うべきだろう。聖司は西老人の孫だから、雫はあの両親の娘だからできたことであって、普通はできない。あれは模範ではない」