「府中で映画を見たが、長さ60分少々の短い映画だったので、体力がまだ残っていた。そこで、府中から聖蹟桜ヶ丘に電車で行き、そこで京王永山まで散歩する計画を即興で立てた」
「なぜ?」
「前から歩きたかったからだ」
「それで?」
「山越えルートを通って歩ききったよ。山越えの坂がきつくて難儀したがね」
「ふーん」
「遠くまで見える丘の上の道からは、【雫~~~っ。大好きだ!】と叫びたくなったがね」
「叫んだの?」
「叫ばないって」
「それで?」
「このあたりに来たのは初めてではないのだが、自分の足で来たのは初めて。その結果分かったことがある」
「それはなに?」
「徒歩では死ぬが、自転車ではもっと死ぬ。事実、自転車で走っている地元民はほぼいない。徒歩の人も少ない。ほとんど車だろう。それだけ坂がきつい」
「それがどうした」
「【耳をすませば】って映画ね。自転車で走るシーンが多いけれど、この坂で自転車を使うのは相当忍耐強い人だけ。まして二人乗りで自転車というのは、かなり困難。2人がかりで坂を上がる描写はかなり適切」
「この坂は人生の試練に喩えるに値するわけだね」
「次は、川沿いルートで歩いてみたいね」
「また挑戦するのかい。で歩いてみたい理由ってなに? 【耳をすませば】の舞台だから?」
「いや。多摩川以西で、最も京王本線と相模原線が接近する場所だから」