学校探偵・内山田教諭とスクールファイブ
Amazon.co.jp


小説・火星の地底世界バルシダー
Amazon.co.jp


火星の地底世界の古代王国【合本】
Amazon.co.jp


宇宙重巡洋艦高尾始末記: 辺境艦隊シリーズ合本
Amazon.co.jp


全艦出撃! 大宇宙の守護者: オルランド・スペース・シリーズ合本
Amazon.co.jp


青春小説 北区赤羽私立赤バニ学園: 制服はバニーガール女装
Amazon.co.jp


坂本龍馬対ゾンビ: Japanese Dawn of the Dead
Amazon.co.jp


彼の味方は動物達と月の姫
Amazon.co.jp


小説・宇宙機動遊撃艦隊: ラト姫物語・セラ姫物語合本
Amazon.co.jp


本土決戦1950: 無敵! 日本陸軍ジェット戦闘隊
Amazon.co.jp


魔女と勇者の秘密: 遠野秋彦ファンタジー小説合本
Amazon.co.jp


無敵合体ロボ軍団 ~遠野秋彦ロボット小説合本~
Amazon.co.jp

2006年09月28日
遠野秋彦の庵小説の洞total 3130 count

オルランドMARK-Iファイター開発秘話 (前編)

Written By: 遠野秋彦連絡先

 撃墜王として名を馳せたサカイ大尉は、異星人から地球を守る連合防衛軍とは全く相性が悪かった。

 事実として、宇宙用の高機動戦闘艇を操らせたらトップクラスの腕前とキャリアの長さを持ち、しかも最前線では喉から手が出るほどベテランパイロットが求められていたのに、サカイ大尉はあっさりと最前線部隊から新兵器の開発部門に飛ばされたのだ。

 公平を期すために補足するなら、このような事態はサカイ大尉の態度や性格だけに起因するものではなかったと言える。組織の筋を通すには、サカイ大尉は格上でありすぎたという事情もある。

 つまりこうだ。

 連合防衛軍という組織が影も形もない時代から、サカイ大尉は異星人と戦っていた。サカイ大尉は実験艦X-1の乗組員の一人で、実は高機動戦闘艇で異星人の戦闘艇を初めて撃破した記録の持ち主でもあるのだ。

 そして、そのような経歴こそがサカイ大尉を最前線から弾き飛ばしたという側面も存在する。異星人を相手に初撃墜を達成した神様のようなパイロットが、あからさまに組織の秩序を乱すような行動を取った場合、神様に注意することははばかられるが、かといって放置しても組織の秩序が保てないのである。

 とすれば、必然的な措置が「窓際送り」である。

 さて、サカイ大尉の転属は、転属させた側としては「窓際送り」を強く意図したものであり、彼らは彼らなりに後ろめたさをもっていたらしい。

 しかし、サカイ大尉を新規に配属され兵器開発部門は全く受け取り方が違っていた。事前に予測も準備もできなかった星間戦争に巻き込まれた地球は、早急に様々な装備を開発して行かねばならなかったのだ。そして、サカイ大尉がテストパイロットとして配属されたことは、開発部門のスタッフからみれば奇跡のような歓迎すべき人事だった。何しろ、サカイ大尉ほど経験豊富なパイロットが開発部門に常駐してくれるなど、まずありえなかったからだ。

 さっそく、サカイ大尉は、サカイ大尉自身が操縦してきた高機動戦闘艇『シャーク』の後継機の開発プロジェクトに配属された。

 『シャーク』とは、まさに様々な状況下で運用してデータを取るための実験機として設計されたものであり、明らかに実戦向きではなかった。最も有名なのは数時間を超えて運用することはまず無いにも関わらず、艇内に簡易居住施設を備えている無駄だろう。だが、それ以外にも武装バリエーションの乏しさや、高機動加速可能なベクトルの範囲が狭いといった問題もあり、早急な後継機の実用化が求められていた。

 サカイ大尉自身が後継機を要求する意見具申を繰り返し行っていた立場である以上、彼は真剣にこのプロジェクトに取り組む価値があると思った。

 さて、FX-ALPHAと名付けられたこのプロジェクトが作り出そうとしていたのは、『シャーク』の全ての弱点を取り除いたまさに理想の高機動戦闘艇であった。機体の全方位に対して高機動加速可能なノズルを備え、オプション交換であらゆる武装を装備可能としていた。パーツを組み替えるだけで、偵察機や攻撃機のバリエーションを作り出すことすらできた。これは、慢性的に装備不足に悩む連合防衛軍には嬉しい特徴であった。開発部門の誰もが誇る傑作機だった。

 ところが、サカイ大尉は試作機を見るなり、ほとんど一瞬で「ゴミ屑」と一撃でそれをこき下ろした。

 開発部門のスタッフは、不快感を隠してその理由をサカイ大尉に質問した。

 その答として、サカイ大尉はシャーク対FX-ALPHAの2つの模擬戦を提案した。

 第1の模擬戦は敵の奇襲に対応するスクランブル発進だった。ほとんどタイムラグ無しで母艦から飛び立つことができたシャークに対して、FX-ALPHAは迎撃仕様へのパーツの組み替えに時間を取られ、迎撃が間に合わず母艦が沈められたと判定された。

 第2の模擬戦は、シャーク対FX-ALPHAのドッグファイトだった。だがこれもシャークの圧勝だった。

 シャークのあらゆる弱点を克服すべく設計されたFX-ALPHAがシャークに負けるという状況は、開発スタッフを無能呼ばわりしたの等しい状況であった。

 FX-ALPHAプロジェクトは、ただちに設計を1から見直すことが命じられた。

 それと同時に、サカイ大尉はFX-ALPHAプロジェクトから外された。彼が送り込まれたのは、必ずしも畑違いとは言えないものの、今ひとつ経験が生かせそうもない攻撃機開発プロジェクト、A-Xであった。

 A-Xのプロジェクトリーダー、パーシング教授は、不満げなサカイ大尉が着任の挨拶に来るなり、すぐにこう言い放った。

 「FX-ALPHAって、アレ、全く駄目だろ」

 サカイ大尉は驚いて目を丸くした。

 パーシング教授は続けていった。「あの全方位ノズルな。あれは操作が難しすぎる。しかも、ノズルの数が増えて機体も重くなり過ぎだ。いくらノズルを付けても機敏には動けないさ。それから、モジュールの組み替えってアイデアは運用が複雑になりすぎていかん。運用する時にはいつも組み替えながら使うから、いざというときすぐに使えないしな」

 そして、パーシング教授はニヤリと笑った。「ここまでは君も見抜いたようだが、アレにはもう1つ致命的な問題がある。何かわかるかね?」

 「いいえ、それは何ですか?」思わずつり込まれてサカイ大尉は言った。

 「こちらが開発中の攻撃機A-Xと比べて、航続距離も行動可能時間も短すぎる。つまり、A-Xの護衛機として使い物にならんのだ」

 「そのA-Xというのは、どのようなものですか?」

 パーシング教授は説明した。

 A-Xは反物質ミサイルによる対艦攻撃を行うことを主任務とした新機種だという。パーツ組み替えのような汎用性は何も考えていないという。ただ、大加速で突進し、反物質ミサイルを撃ち込んで飛び去る……。それだけの機能に特化した機種だという。

 1つだけ凝っていると言えるのは、ミサイルの発射管2門と加速ブースターをセットにしたカートリッジを短時間で交換可能な仕掛けにしている点だった。敵艦の近くにカートリッジを運んでおけば、容易に反復攻撃が可能になるというわけだ。

 サカイ大尉は、反物質ミサイルを徹底的に敵艦に撃ち込むという単一の目的に特化したA-Xに好感を抱いた。なぜなら、最前線ではシンプルな行動をいかに素早く行いうるかが問題になるとサカイ大尉は考えていたからだ。

 事実として、タイミングを逸した作戦行動に駆り出され、仲間を無駄死する様を見る羽目に陥ったことは、1回や2回ではない。

 参謀達が考える長期戦略ならともかく、最前線では状況が常に流動的に変化する。議論を重ねて最善の戦いを目指すのは、即座に敗北と無駄な犠牲に直結しかねない。しかし、数で劣る連合防衛軍の指揮官は、どうしても数の劣勢を意識して戦闘に慎重になってしまう傾向がある。

 それは連合防衛軍において正しい傾向だと認識されていたが、実験艦X-1に乗り組んでいたこともあるサカイ大尉の考えは違った。X-1が単艦で圧倒的に優勢の敵艦隊の攻撃を退けることができたのは、ひとえに敵が態度を決める前に攻撃してしまうという戦い方によるものだった……、とサカイ大尉は考えていた。実際問題、敵艦隊は規模が大きければ大きいほどカモだった。有効な反撃に転じるまでのタイムラグが大きく、そこを突けば面白いように戦果を拡大できた。

 だからこそ、サカイ大尉は常に最も有効な戦い方に対する意見具申は常に行い続け、結果として前線部隊と相容れずに左遷されたとも言える。

 そして、サカイ大尉は、シンプルに単一目的に特化したこのA-Xこそ、最前線で役に立つ確信した。

 だが、そうではなかった。

 パーシング教授は最後にこう告げたのだ。

 「今のままのA-Xでは、使い物にならんよ」

 「なぜですか?」

 「敵の高機動戦闘艇が迎撃に来たら、ミサイル発射前にほとんど落とされるというシミュレーション結果が出ている」

 「それでは、こちらも護衛機を付ければ……。シャークなら簡易居住施設があるので、長期間の航行でも追従できます」

 「シャークではA-Xの突入加速に追従できん。露払いとして先行すべき護衛機が後から付いてくるようでは話にならん」

 「ではどうすれば……」

 「実はそのための試作機はもうできている」とパーシング教授はニヤリと笑った。「公式には、突入時の火力支援を行うA-Xのオプションカートリッジということになっているが、実質は高機動戦闘艇そのものだ」

 「まさか……」

 「ついて来たまえ」

 小惑星内部にトンネルを縦横に走らせて作られた施設は、何がどこにあるのか推測するのは難しかった。

 パーシング教授の執務室のほんの裏手と言っても良い至近距離に、試作機のハンガーがあったことは、サカイ大尉には驚きだった。管理職といえば、油臭い現場から遠く離れた場所にオフィスを構えるのが普通だと思っていたからだ。

 中央に鎮座していたのは、先頭部だけ丸く絞られた平べったい直方体といった機体だった。サイズはシャークの数倍はあるだろう。試作機らしく注意を引く派手な色でペイントされ、"A-X 003"というナンバーがマーキングされていた。これがA-Xの試作機で、おそらく3号機といったところだろうとサカイ大尉は考えた、

 「これだ」とパーシング教授が指さしたのは、ハンガーの片隅に置かれた小さな機体だった。全長はシャークの半分にも満たないだろう。

 だが、サカイ大尉はそれを見た瞬間に、強い違和感を感じた。

 「これは……」

 それはまるで大気圏内を飛ぶジェット戦闘機に見えた。

 宇宙を飛ぶ高機動戦闘艇であっても、大気圏内飛行を行う場合があるから、ある程度空力を考えた形になる。それゆえに、両者は割と良く似たフォルムに仕上がることがある。だが、両者には決定的な差がある。それが高機動ノズルだ。空力で機体の姿勢を変えることができない宇宙空間で、素早く姿勢を変えるためのノズルは、宇宙空間で使用される機体のアイデンティティとも言えた。

 だが、目の前の機体にはそのノズルが1つも見あたらなかったのだ……。

(後編に続く)

(遠野秋彦・作 ©2006 TOHNO, Akihiko)

★★ 遠野秋彦の長編小説はここで買えます。

オルランドの全てが読めるお買い得電子書籍はこれ! 超兵器が宇宙を切り裂き、美女が濡れる。

全艦出撃! 大宇宙の守護者: オルランド・スペース・シリーズ合本

Facebook

遠野秋彦

キーワード【 遠野秋彦の庵小説の洞
【小説の洞】の次のコンテンツ
2006年
10月
12日
オルランドMARK-Iファイター開発秘話 (後編)
3days 0 count
total 2940 count
【小説の洞】の前のコンテンツ
2006年
09月
14日
オルランドの実験宇宙戦艦Xシリーズ
3days 0 count
total 2970 count

このサイト内の関連コンテンツ リスト

2006年
02月
17日
オルランドのアヤ
3days 0 count
total 3121 count
2006年
03月
02日
オルランドの小雀戦闘機隊 (前編)
3days 0 count
total 2892 count
2006年
03月
16日
オルランドの小雀戦闘機隊 (中編)
3days 0 count
total 3102 count
2006年
03月
30日
オルランドの小雀戦闘機隊 (後編)
3days 0 count
total 3348 count
2006年
04月
27日
オルランド戦艦建造秘話「カズサ誕生物語」
3days 0 count
total 3336 count
2006年
06月
08日
オルランド皇帝の愛人
3days 0 count
total 3306 count
2006年
06月
22日
オルランドのデストロイヤー乗組員
3days 0 count
total 2771 count
2006年
07月
06日
オルランド最大のライバル、幻影のサリー人
3days 0 count
total 2906 count
2006年
07月
20日
オルランドと銀河三重衝突事件
3days 0 count
total 2992 count
2006年
08月
03日
オルランドと第2のオルランド
3days 0 count
total 2729 count
2006年
08月
31日
オルランドと裏切り者クタラ
3days 0 count
total 3093 count
2006年
09月
14日
オルランドの実験宇宙戦艦Xシリーズ
3days 0 count
total 2970 count
2006年
10月
12日
オルランドMARK-Iファイター開発秘話 (後編)
3days 0 count
total 2940 count
2006年
10月
26日
オルランドとベーダー最後の勝利
3days 0 count
total 2797 count
2006年
11月
09日
オルランドとドランバッタ
3days 0 count
total 3521 count
2007年
03月
01日
オルランドの人工惑星
3days 0 count
total 2702 count
2008年
06月
05日
オルランドと太平洋戦争
3days 0 count
total 2884 count
2008年
06月
19日
オルランドと艦長のジレンマ
3days 0 count
total 2625 count
2008年
12月
18日
オルランドとオート・ガーディアン (前編)
3days 0 count
total 2508 count
2009年
01月
01日
オルランドとオート・ガーディアン (中編)
3days 0 count
total 2671 count
2009年
01月
15日
オルランドとオート・ガーディアン (後編)
3days 0 count
total 2721 count
2009年
02月
12日
オルランドと人工惑星計画
3days 0 count
total 2794 count
2009年
05月
07日
オルランドと100Kクラス戦艦
3days 0 count
total 2653 count
2009年
06月
04日
オルランドとトラウマ持ちの砲手
3days 0 count
total 2810 count
2009年
06月
18日
オルランドと2つの宇宙軍
3days 0 count
total 2761 count
2009年
09月
10日
オルランドのストーキング ファイター
3days 0 count
total 2980 count
2009年
11月
05日
オルランドの攻撃機が消えた日
3days 0 count
total 2665 count
2010年
02月
11日
オルランドと最年少軍人
3days 0 count
total 3241 count
2010年
09月
09日
オルランドのカエサルAI
3days 0 count
total 2789 count
2011年
06月
12日
遠野秋彦の庵創作メモ
オルランド・シリーズのビジュアルの世界
3days 0 count
total 2487 count
2011年
06月
13日
遠野秋彦の庵創作メモ
オルランド・シリーズのビジュアルの世界2
3days 0 count
total 2601 count
2012年
05月
17日
オルランドと超空洞宇宙
3days 0 count
total 2283 count


学校探偵・内山田教諭とスクールファイブ
Amazon.co.jp


小説・火星の地底世界バルシダー
Amazon.co.jp


火星の地底世界の古代王国【合本】
Amazon.co.jp


宇宙重巡洋艦高尾始末記: 辺境艦隊シリーズ合本
Amazon.co.jp


全艦出撃! 大宇宙の守護者: オルランド・スペース・シリーズ合本
Amazon.co.jp


青春小説 北区赤羽私立赤バニ学園: 制服はバニーガール女装
Amazon.co.jp


坂本龍馬対ゾンビ: Japanese Dawn of the Dead
Amazon.co.jp


彼の味方は動物達と月の姫
Amazon.co.jp


小説・宇宙機動遊撃艦隊: ラト姫物語・セラ姫物語合本
Amazon.co.jp


本土決戦1950: 無敵! 日本陸軍ジェット戦闘隊
Amazon.co.jp


魔女と勇者の秘密: 遠野秋彦ファンタジー小説合本
Amazon.co.jp


無敵合体ロボ軍団 ~遠野秋彦ロボット小説合本~
Amazon.co.jp

このコンテンツを書いた遠野秋彦へメッセージを送る

[メッセージ送信フォームを利用する]

メッセージ送信フォームを利用することで、遠野秋彦に対してメッセージを送ることができます。

この機能は、100%確実に遠野秋彦へメッセージを伝達するものではなく、また、確実に遠野秋彦よりの返事を得られるものではないことにご注意ください。

このコンテンツへトラックバックするためのURL

https://mag.autumn.org/tb.aspx/20060928160040
サイトの表紙【小説の洞】の表紙【小説の洞】のコンテンツ全リスト 【小説の洞】の入手全リスト 【小説の洞】のRSS1.0形式の情報このサイトの全キーワードリスト 印刷用ページ

管理者: 遠野秋彦連絡先

Powered by MagSite2 Version 0.36 (Alpha-Test) Copyright (c) 2004-2021 Pie Dey.Co.,Ltd.